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名義財産の落とし穴!相続財産の調査は被相続人の名義だけでよい?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第205回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q父に相続がありました。
父の相続財産を調べようと銀行や証券会社に当たってみようと思っています。
調査するのは、被相続人である父名義になっているものだけでよいのでしょうか?

A
1.税務調査で狙われる名義預金
相続税は原則として、
亡くなったときの被相続人の財産に課税されます。
しかし、注意すべきは被相続人の名義になっていない財産であっても、
実質的に被相続人の財産と認められる場合は、
相続財産として課税対象になるという点です。

これを「名義財産」と呼び、特に預金の場合は「名義預金」といいます。
例えば、親が子供名義の預金通帳を作成し、
そこに親のお金を入れた場合、形式上は子供の預金であっても、
実質的には親の預金として相続税が課税されることになります。

一見すると相続財産に含まるか判断つかない部分でもあり、
相続税の税務調査ではよく問題になる点です。

この名義預金となる判断としては、
過去の判例(東京地判平成20年10月17日)においては、
「財産の出捐者、財産の管理及び運用の状況、
財産から生ずる利益の帰属者、
被相続人と財産の名義人並びに財産の管理及び運用をする者との関係、
財産の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して判断する」
としています。

相続税の税務調査では、
この名義預金の有無を確認するために、
金融機関から被相続人だけでなく相続人を含む家族の
預金履歴まで取り寄せて調査するケースがあります。

2.名義預金だけではない「名義財産」の種類
名義財産は預金だけでなく、さまざまな財産に及びます。
◯不動産の名義財産(名義不動産)
被相続人が資金を出して購入したにもかかわらず、
配偶者や子供名義にしている不動産。
取得資金の出所、ローンの返済者、固定資産税の負担者、
管理の実態などから判断されます。

◯有価証券の名義財産(名義株)
被相続人が資金を拠出して購入した株式や投資信託を家族名義にしているケース。
購入資金の出所や配当金の受取人、証券の管理実態などが調査されます。

◯生命保険の名義財産(名義保険)
契約者と保険料負担者が異なる保険契約。
たとえば、契約者の名義が子であるにもかかわらず、
実際には被相続人である父が生前に
保険料を負担していた保険契約のことです。

死亡保険を相続人が受け取った場合には、
「法定相続人の数✕500万円」の生命保険の非課税枠があります。
しかし、名義保険の場合は、
死亡保険金ではないので、
非課税の対象とはならないことに注意しなければなりません。

◯その他の名義財産
自動車や貴金属、美術品など、
形式上は家族名義でも被相続人が購入・管理していたもの。

3.名義財産に時効はない?
名義預金などの名義財産には時効がありません。
例えば20年前から孫名義で積み立てていた預金であっても、
贈与と認められない限り、
相続開始時に被相続人の財産と認定されれば課税対象となります。

通常の生前贈与では、贈与税を払っていなくても、
最大7年経過すれば時効として、納税が免除されます。
しかし、名義財産は贈与と認められない限り、
何年経過していても常に被相続人の財産として扱われます。
「長い期間が経過したから大丈夫」という考えは
通用しない点に注意が必要です。

4.名義財産の回避方法
名義財産と認定されないためには、
以下の点に注意する必要があります:

(1)贈与契約書の作成
口頭の合意だけでなく、書面で
「いつ・誰が・誰に・何を・どのように」贈与したかを明確にします。
特に多額の贈与では公正証書にしておくとより確実です。

(2)贈与税申告の実施
1年間の贈与額が基礎控除110万円を超える場合は贈与税の申告が必要です。
たとえ110万円以下でも、
申告書を提出しておけば贈与の事実を公的に証明できます。

(3)名義人本人による管理・使用
贈与した財産は名義人が自分で管理し、
自由に出し入れ・処分できる状態にしておきます。
贈与者が管理し続けると形式だけの贈与と見なされる恐れがあります。

(4)銀行振込による資金移動
贈与する際は現金手渡しでなく、銀行振込で履歴を残します。
後から税務署に説明する際にも客観的な証拠となります。

(5)計画的な贈与の実施
相続直前ではなく余裕をもって計画的に贈与を行います。
毎年基礎控除内で贈与する方法や、
住宅取得資金・教育資金の非課税制度を活用する方法もあります。

5.まとめ
相続財産の調査は被相続人名義の財産だけでなく、
名義財産の有無も確認する必要があります。
名義財産は税務調査で特に重点的にチェックされる項目であり、
申告漏れが発覚した場合は追徴課税に加え、
無申告加算税や過少申告加算税、
悪質な場合は重加算税(35%)が課される可能性があるため注意してください。

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ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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