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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第294回】不動産鑑定士・住宅診断士
皆川 聡が斬る!④

常識的な不動産鑑定評価書へ

皆様こんにちは。
元板前の不動産鑑定士・住宅診断士の皆川聡です。

今回は、昨年国税庁との裁判にて、
勝訴をいただいたことについて、記載させていただきます。
その経緯については、下記URLにて記載させていただいておりますので、
今回は、その内容をちょっとだけ深掘りして、記載させていただきます。

https://www.aoi-fudousan-consulting.com/%E5%9B%BD%E7%A8%8E%E5%BA%81%E3%81%A8%E3%81%AE%E8%A3%81%E5%88%A4%E3%81%AB%E3%81%A6%E5%AE%8C%E5%85%A8%E5%8B%9D%E8%A8%B4-%E8%AA%8D%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%9F%E3%81%A0%E3%81%8F/

一般的に、相続税評価の際には、路線価評価(財産評価基本通達による評価)
になります。
ですので、鑑定評価までは全く不要です。

しかし、土地の評価を求めるに当たり、
『財産評価通達の定めにより難い特別な事情がある場合』には、
鑑定評価によることができますし、
その不動産のもつ本来の価値(時価)を基準にする担税力の観点より、
至極当然と言えます。

原理原則は、相続開始時点に、鑑定評価によるべきところを、
時価の0.8倍の相続税路線価をその道路に設定し、
課税の簡便性や公平性を担保するために、相続税路線価が設定されております。

であるため、わざわざ鑑定評価をとったとしても、
路線価評価自体が、そもそも時価は建物も含め低く評価されているため、
低く評価しているからいいでしょう。還付請求される余地はないですよね。
ということになります。

しかし、相続税路線価に反映されていないような
大きな減価要因が介在している物件の場合には、
異なります。
財産評価で決められたルールでは、
時価よりもあまりにも高くなってしまった、
食い違ってしまうケースがあります。
特に無道路地や高低差が著しい物件のような場合には、
その食い違いが大きくなります。

この路線価評価は、どう見ても常識的にこんなに高く無いよね、
という物件が、鑑定評価を活用する意味が出てくる物件と言えます。
また、建築基準法をちょっとかじっている方でしたら、
無道路地はその幅はその程度によりかなり異なりますが、
低くなることは当然ですので、「路線価評価では高すぎない???」
という場合が多くあります。
この場合にも鑑定活用の機会があると言えます。
つまり、鑑定評価により、その不動産の持つ担税力がこれしかないので、
鑑定評価額を基準に税率を乗じ納税します。というイメージになります。

そこで、どんな鑑定評価書でもいいかと言うと、それは否と言えます。
鑑定評価書が否認されるケースとは、
鑑定独自の一方向の評価だと否認される可能性は高まります。
要するに違う角度、常識的な観点が必要になります。

一般的に、鑑定評価書は、鑑定評価基準のルールに則って、
その順番通りで殆ど記載されていますが、どこに何が書いてあるのか、
初見の方には全く皆目検討が付かないと言えます。

また、最有効使用であるもののみを前提に評価をすることが多いため、
別の観点からの検証がなされていない鑑定評価書が大多数です。

それでは、本当にそうなの?こう見たらどうなるの?
という国税庁のご担当者で、勝手に???が多くなってしまうということになります。
やはり、お互い人間ですので、誠実に、分かり易く評価を行うべきと言えます。

先日認めていただいた弊社の鑑定評価書は、
重回帰分析なども活用して、5つの価格を算出しました。
他社の調査報告書とは言え、
一度否認されているというマイナスの状況から、
なんとか挽回せねばという想いから、5つの観点からの5つの価格でもって、
国税庁の方や裁判所からの質問が来ないようにしました。
それに加えて、見やすい、分かりやすい、
写真や図面加工なども極限まで反映した鑑定評価書を作成することにより、
どちらと言いますと、鑑定評価書と言うよりも、レポートのようなイメージです。

つまり、いろいろな角度から、圧倒的過ぎるという不動産鑑定評価書の作成です。

その後、国税庁の方々から、
ささやかなご質問はいただきましたが、全て即答させていただきました。

なお、弊社の前の否認されてしまった鑑定事務所では、
通常通り、1つの価格で調査価額を決定されていらっしゃいました。

私も、実は、受注段階では、同じような形で、
1つの価格になることを前提で受託しました。
しかし、これまでの裁判の資料を拝見し、これではだめだ!!!と思い、
途中で何度も閃き、追加に次ぐ追加で、結局5つの価格の算出を行うまでとなりました。

いつも通りの鑑定では、恐らく敗訴していたと思います。

そこで、
「説得力は大丈夫?常識的には大丈夫?違う観点からも突っ込まれても大丈夫?」
を常に言い聞かせ最後の最後まで独自の鑑定評価書を作成しないとだめだ!!!
と思い、通常の5倍以上時間はかかりましたが、力作ができました。

今になって考えると、かつて板前をやっていたことが、
ここで効いてきていると思いました。

私の板前時代
親方に
『仕事は正直だ!』
とよく言われました。

どのお仕事も同じだなと!
今になって、やはり、その言葉の重さに、痛感しております。

人にとって、普遍的なことは、最強だと!!!

そこで、私の今の役割としては、

『圧倒的な不動産鑑定評価書を作成する。』

ここに尽きると言えます。

板前をしていたことが、
遠回りではなかったと思いますし、
もし、遠回りだったと考えてしまうときも、
今の自分に活きていると、自分に言い直し聞かせております。

また、板前の職人的な気質が、
今では住宅診断にも活きて、
建物評価の精緻化を目指し、
建物の実質的な経済価値や残存耐用年数を反映できる
ようになり、でも、さらに進化し続けようと精進致しております。

皆様も何かしら、無駄な時間などを過ごされたと思われていたことが、
違う角度から見ると、それらがヒントで、実は良かった!
とか、そこで培ったことが今に活きている!
ということも少なくないのかもと思われます。

そのように思うようにするとか、感じるようにすると、
いつも心地良くいられるような気が致しますし、
今の心地良さが、さらに良い将来を創っていくような気が致します。

今回で最後になります。
今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

皆々様の不動産投資の御発展と御健勝を心よりお祈り申し上げます。

 

ABOUT ME
皆川聡
株式会社Aoi不動産鑑定 大手不動産鑑定会社に約8年従事し、メガバンク、政府系金融機関、地銀、信用金庫、信用組合などの金融機関の担保評価をメインに約2500件の案件を携わり、国際線ターミナルの評価の実績もあり。 退職後、平成27年4月に開業。 開業後は、税務対策の鑑定評価や裁判調停等の鑑定評価での多数実績。住宅診断を反映した鑑定評価にて、より清緻な鑑定評価を行っており、鑑定評価額だけではなく、皆様の建物の日ごろのメンテナンスのポイントなどもご提案し、ご好評をいただいております。また2020年10月には、相続税の還付請求にて、他の不動産鑑定士が国税不服審判所にて否認された案件を、その後当職が不動産鑑定を担当。圧倒的な不動産鑑定評価により、東京地裁において、国税庁との裁判で無事完全勝訴しております。
さらに詳しく知りたい方へ