金融機関への不動産鑑定評価書に対し、
住宅(建物)診断を反映することの必要性について
皆様こんにちは。
不動産鑑定士・住宅診断士の皆川聡です。
今回より、今月4回は、私が担当させていただきます。
1回目は、金融機関への不動産鑑定士からの担保評価に対し、
住宅(建物)診断をすることの必要性について、記載致します。
早期発見・早期治療 と 早期発見・早期修繕
さて、皆様、そもそもご自身のお身体について、
年一度は、健康診断をされると思いますが、
それは何故なさるのでしょうか?
おそらくそれは、ご自身のお身体のどこかに病気がすでに発症、
またはその因子が発生していた場合に、
それらをできる限り早期に発見するためだと思います。
さらに、発見した因子などに対して、
早期治療を行うことにより、健康寿命を延ばし、
ご家族などとより長く幸せに過ごすことだと思います。
建物についても、早期に悪い箇所を発見し、
早期に修繕等の対処を行うことにより、
建物も頑強なまま維持され、長寿命化し、
建物内の生活環境も改善されます。
建物内の快適環境により、
心身も建物も健康寿命が長くなると言えます。
従前の担保評価 と これからの担保評価
皆様、ご自身もしくはその周辺の木造の建物で、
築30年以上経っていて、その家に住んでもいいかなと
思うほど手入れが行き届いた物件もあると思います。
単純に築年数だけで建物は評価できないと言えます。
そもそも、中古住宅は大工や住宅メーカーの施工の程度と
その後の使用者のメンテナンス状況等により、建物の劣化状況が異なります。
要するに蓋を開けてみないと劣化状況は分かりません。
また、従来の金融機関の担保評価では、
外観調査を前提とした鑑定評価が主流でした。
金融機関からは、
「債務者または債務予定者に気が付かれないように、調査し評価せよ」
ということでした。
「本当に評価しているのか!?」
と元板前の私は、そう思いつつ、いつも評価をしておりました。
また、金融機関では、バブルの経験を教訓に、
過度に楽観的な融資を戒めることから、
担保については保守的評価ということも根付いており、
そのことも相俟って、法定耐用年数を超過した建物は
ゼロ評価という行内査定が一般的に続いております。
しかし、昨今と言いますか、平成25年位から、
中古住宅市場の活性化が国交省から叫ばれておりますが、
なかなか実態は進んでおりません。
要するに、
「今までは蓋を開けないようにしていましたが、
今後は蓋を開けましょう」
「そして、リスクを開示しましょう」
ということです。
今後は、
1.建物の物的な劣化状況やその疑義の確認を住宅診断士が行い、
2.それらの調査を基に経済価値の判定を不動産鑑定士が行い、
3.それらを基に融資付けを金融機関が行う
イメージになります。
従前、ゼロ評価であった築古建物については、
今後は、きちんとメンテナンス等を施していれば、
住宅診断士の結果と不動産鑑定士の鑑定評価により、
建物の価値が見直されます。
そしてまた、当該価値の精査部分に融資が付けられる時代がやってきますし、
徐々にそのような金融機関も増えてきております。
以上