ブログ

第三者へ遺贈するという遺言書。相続人がするべき手続きは?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第212回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q被相続人の遺言書が見つかりました。
その中には、相続人ではない、第三者(親族以外)に対して、
不動産を遺贈すると記載がありました。
このとき、相続人は、
この第三者に対して何か手続きをしなければならないのでしょうか。
遺言書には遺言執行についての記載はありません。

 

A
1.相続人から受遺者への通知義務
相続人から受遺者(遺贈を受ける第三者)に遺言内容を
通知する法的義務はありません。
これは自筆証書遺言、公正証書遺言、
秘密証書遺言のいずれの場合でも同様です。

法務局保管の自筆証書遺言の場合、
相続人等が「遺言書情報証明書」を請求すると、
他の相続人等へは遺言書が保管されている旨の
通知が法務局から自動的に発せられますが、
これはあくまで「遺言書が存在する事実」の通知であり、
具体的な内容(誰に何を遺贈するか)までは通知されません。

また、この通知も受遺者(相続人以外の第三者)には送られないため、
受遺者は遺言の存在自体を知らない可能性があります。

ただし、実務上は相続人が受遺者に遺言内容を伝え、
遺贈を履行する段取りをとることが望ましいといえます。

なぜなら、民法上、受遺者は遺言者死亡後
いつでも遺贈を放棄できるため(民法986条1項)、
受遺者自身が遺言内容を知った上で
権利行使するか放棄するか判断する必要があるからです。

相続人(遺贈義務者)は、受遺者が態度を明確にしない場合には、
相当の期間を定めて遺贈を承認するか放棄するか催告することができ、
この催告期間内に受遺者が返答しなければ
遺贈を承認したものとみなされます(民法987条)。

2.遺言の履行義務
遺言執行者の指定がない場合でも、遺言自体は有効です。
遺言執行者の指定は法律上必須ではありません。
この場合、遺言の履行義務(遺贈義務)は
原則として相続人に帰属します。

相続人全員が遺言内容に納得し協力的であれば、
相続人らが共同で遺言の執行(遺贈の履行)に当たることになります。

相続人は、受遺者である第三者に対し、
遺贈の目的物である不動産の引渡しや
所有権移転登記などの手続きを行う必要があります。
この場合の登記手続は、
相続人全員と受遺者による共同申請となり、
相続人全員の印鑑証明書などが必要となります。

3.受遺者の単独で登記申請は可能か?
令和5年4月の民法および不動産登記法の改正により、
「相続人に対する」遺贈登記については受遺者単独申請が可能となりました。

しかし、本件のような「相続人以外の第三者」への遺贈については、
この改正は適用されません。
したがって、従来通り相続人全員と受遺者の共同申請で登記を行うか、
後述する遺言執行者を立てた上で、受遺者と遺言執行者で申請する形となります。

なお、2024年4月1日以降、相続登記は義務化されていますので、遺
贈による登記についても早めに手続きを行うことが推奨されます。

4.相続人が協力しない場合の対応法
遺言によって財産が相続人以外の第三者に渡るケースでは、
相続人が非協力的な態度をとることも少なくありません。

相続人が本来相続できたはずの財産が遺贈で他人に渡ることになるため、心
理的な抵抗から登記手続きへの協力
(書類への署名や印鑑証明書の提供など)を拒むことがあります。

このような場合の効果的な対処法は、
家庭裁判所による遺言執行者の選任です。
民法上、遺言に執行者の指定がない場合、
利害関係人(相続人、受遺者、債権者など)の申立てにより
家庭裁判所が遺言執行者を選任することができます。
遺言執行者が選任されると、
遺贈義務者(登記手続き上の義務者)は遺言執行者のみとなり、
受遺者と遺言執行者の二者で所有権移転登記を完了させることが可能になります。

つまり、相続人全員の実印や印鑑証明書を集める必要がなくなり、
非協力的な相続人がいても遺言内容を実現できるのです。

遺言執行者には相続人ではない専門家
(司法書士や弁護士など)を選任すると、
中立かつ円滑に手続きが進められるでしょう。

なお、遺言執行者が就任すれば、
相続人は遺言の執行を妨害できません。

5.まとめ
遺言による遺贈の手続きは複雑な面もあります。
必要に応じて司法書士や弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。

《お知らせ》
(1)西東京で外壁塗装の無料セミナー
『節税×外壁塗装×相続対策 今こそ攻めの外壁塗装へ
守りから攻めの外壁塗装セミナー』
大家さん専門税理士が自ら経験した外壁塗装に関する業者の選び方から
税務・節税のポイントをわかりやすく解説します。
日時:7月3日(木)15:30~
場所:青梅信用金庫羽村支店
(羽村市緑ヶ丘5-3-3)
費用:無料
申し込み: https://forms.gle/QMDTz4vADysDVuwC9

(2)「大家さん専門税理士が語る」相続対策にツカえる法人化セミナー
※セミナー参加者対象、無料相談会あります。
(セミナー会場とは別になります)
日時:7月5日(土)10:00~12:00
場所:クイック会議室
神奈川県横浜市西区高島2-11-2
(横浜駅東口 徒歩3分)
費用:無料
申し込み:https://forms.gle/nXbBpj5GKVw9eZET9
※無料相談会 先着3名(無料相談会のみのご参加はご遠慮ください。)
場所:神奈川県横浜市西区北幸1-11-5
相鉄KSビル905 横浜駅9出口から徒歩3分
時間:①14:00~14:45
②15:00~15:45
③16:00~16:45
申し込み:https://timerex.net/s/e.fukuoka.sogo_7397/a127be7d

2.税務調査解体新書の無料ダウンロード
AI賃料査定でおなじみのスマサテさんとの協同企画で
税務調査アンケートを実施した結果
を『税務調査解体新書』にまとめました。
アンケート結果だけではなく、税理士としてのコメントも多く掲載しています。
スマサテさんのホームページからダウンロードできます。
https://owner.sumasate.jp/lp

ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
さらに詳しく知りたい方へ