渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第260回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q
住宅地に200㎡ほどの土地を持っており、
コインパーキング業者に一括で貸しています。
業者が精算機やフェンスを設置して運営し、
私は毎月、決まった賃料を受け取るだけです。
土地を貸していることで相続税評価も
大きく下がるはずだと思っていますが、
どのように評価されるのでしょうか?
A
1.結論
コインパーキング業者などに土地を一括で貸している場合、
相続税評価は自用地としての評価額から「賃借権」の価額を差し引けます。
ですから「下がる」のは事実です。
ただし、その下げ幅はごく小さく、
多くのケースで自用地評価額の2.5%程度にとどまります。
借地として貸した土地(貸宅地)が6〜7割下がるのとは、桁が違うのです。
なぜそうなるのか、順に見ていきましょう。
2.そもそも、どんな貸し方なら下がるのか
――自主運営と業者貸付の違い
駐車場の評価が下がるかどうかの分かれ目は、
「土地全体に、賃借権という“重し”が乗っているか」です。
まず、ご自身で区画を引いて利用者に
1台ずつ貸す月極駐車場(自主運営)を考えます。
このとき相手は不特定多数の利用者で、
一人ひとりの権利は、借地借家法で守られておらず、弱いのです。
法的にも「土地を使わせる」というより
「車を預かって保管する」契約に近いものとされます。
地主はいつでも区画を引き直したり、
一部を閉鎖したりできますし、
土地全体を誰か一人に明け渡しているわけでもありません。
つまり、土地全体に乗る賃借権がない。
だから自用地評価のまま、減額はありません。
これに対して、コインパーキング業者などに
土地を一括で貸し付けるケース(業者貸付)では、
土地全体を一つの業者に明け渡し、
業者がそこを排他的に占有して、
精算機やフェンスを設置し、運営します。
地主は契約期間中、その土地を自由に使えません。
ここで初めて、土地全体に「賃借権」という重しが乗ります。
だから自用地としての価額から
賃借権の分を差し引けるのです(財産評価基本通達86)。
注意したいのは、契約形態によって、
減額のあり・なしが異なるのです。
たとえば、募集や集金だけを業者に任せる
「管理委託」は、料金収入が地主のものとなり、
事業の主体も地主ですから、
自主運営と同じ扱い――減額はありません。
一方、業者が土地を借り上げて利用者に又貸しする
「一括借り上げ(サブリース)」は、
業者が事業主体ですから、
業者貸付として減額の対象になります。
見分けるポイントは四つです。
(1)駐車場事業の主体は地主か業者か
(2)利用料金は地主に入るか業者に入るか(地主が受け取るのは利用料金か、それとも定額の賃料か)
(3)精算機やフェンスを設置したのは地主か業者か
(4)地主はその土地を自由に使えるか。
これらが「業者側」に振れているほど、業者貸付=減額あり、に近づきます。
3.賃借権はいくらと評価するのか
では、業者貸付で差し引ける賃借権は、いくらと評価するのでしょうか。
雑種地の賃借権には2種類あります(財産評価基本通達87)。
ひとつは、賃借権の登記がある、権利金を支払っている、
堅固な構築物の所有を目的とする――といった強い賃借権で、
〔法定地上権割合と借地権割合のいずれか低い割合〕で評価します。
もうひとつは、それ以外の弱い賃借権で、〔法定地上権割合×1/2〕で評価します。
法定地上権割合は、
残存期間が10年以下なら5%、
5年超10年以下なら10%、
10年超15年以下なら15%、
15年超20年以下なら20%…と上がります。
弱い賃借権は、その半分(2.5%、5%、7.5%…)です。
具体例で計算してみましょう。
・自用地としての評価額 5,000万円(路線価25万円/㎡、借地権割合60%、200㎡)
・業者と一括借り上げ契約、相続開始時点の残存期間は2年
コインパーキングの一括借り上げは2〜3年契約が基本ですから、
残存期間はまず「10年以下」に収まります。
そこで法定地上権割合5%の半分、2.5%を使います。
賃借権の価額 = 5,000万円 × 2.5% = 125万円
評価額 = 5,000万円 − 125万円 = 4,875万円
下がったのは125万円、率にして2.5%だけです。
もしこの土地をご自身で月極運営していれば5,000万円のまま。
逆に「借地(建物所有目的)」として貸していれば、
貸宅地で5,000万円×(1−60%)=2,000万円まで下がります。
同じ「貸す」でも、これだけ差が出るのです。
4.駐車場の賃借権
「では強い賃借権で評価して、もっと下げられないか」と思うかもしれません。
しかし駐車場では、それは難しいのが実情です。
駐車場のアスファルト舗装は、
鉄骨の柱を立てた建物などと比べて堅固とはいえず、
「堅固な構築物」には当たらないと判断されています。
さらに、業者との契約では権利金の授受も賃借権の登記もなく、
賃借人が権利を自由に処分できるわけでもありません。
こうした理由から、駐車場の賃借権は強い方に該当しない、
とした裁決があります(金沢国税不服審判所 令和2年1月10日裁決)。
ですから、駐車場の業者貸付では弱い方の賃借権
――2.5%程度の小幅な減額――になるのが通例です。
そもそも土地評価の減額は、
借地借家法が借り手を手厚く守る場面
(建物のための借地や、建物の賃貸)で大きく生じます。
駐車場の賃借権は借地借家法の保護が及ばない弱い権利ですから、
減額も小さいのです。
5.まとめ
コインパーキング業者などへの一括貸付は、
相続税評価が「下がる」ものの、
その幅は賃借権の分だけ
――多くは自用地評価額の2.5%程度の小幅にとどまります。
残存期間が長いほど割合は上がりますが、
短期契約が基本の駐車場では、大きくは評価が下がらないのです。
1.税制改正と確定申告のオンライン無料セミナー
『大家さん専門税理士が語る!
過去の相続・住所変更も対象?登記義務化に備える!知っておきたい新制度2026』
日時:6月28日(日)10:00~12:00
費用:無料
申し込み:
https://www.o.biz-ana.com/seminar/seminar20260131/
(主催:株式会社CBIT)
2.金沢で無料リアルセミナー
大家さん専門税理士が語る! 「継ぎたい」に変える賃貸経営改善術
日時:7月18日(土)10:00~11:30
費用:無料
会場:株式会社サンコーすまいる 2階特設会場
石川県金沢市小坂町西77-3
申し込みTEL:076-252-0322
担当:山田裕也(ヤマダユウヤ)
(主催:株式会社サンコーすまいる ピタットハウス金沢東店)



