渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第267回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q
父が高齢になったのを機に、
長く空いたままだった土地200㎡を、
2年前にアスファルト舗装して月極駐車場にしました。
8台分の区画を引き、近隣の方に貸しています。
舗装さえしてあれば、
いつ始めた駐車場でも200㎡まで50%減額
できると考えてよいのでしょうか?
A
残念ながら、このままでは使えません。
相続開始前3年以内に新たに
貸付事業に使い始めた土地は、
原則として貸付事業用宅地等から除かれるからです。
舗装をして構築物の要件を満たしていても、
この「3年のしばり」で要件を満たさなくなってしまいます。
ただし、例外があります。
1.3年のしばりとは
平成30年度の税制改正で、
貸付事業用宅地等の要件に一つ条件が加わりました。
相続開始前3年以内に新たに
貸付事業の用に供された宅地等は、
特例の対象から外す、というものです。
狙いは、駆け込みの相続税対策を封じることにあります。
余命が短いと分かってから手元の預貯金を不動産に換え、
評価を圧縮したうえに特例まで使う――
そうした短期の節税を防ぐ趣旨です。
3年のしばりが見ているのは、
その土地をいつ買ったかではありません。
いつ新たに貸付事業に使い始めたかです。
ですから、「先祖代々の土地だから大丈夫」とはいきません。
何十年も前から持っている土地であっても、
更地のまま置いていたものを2年前に駐車場にしたのなら、
貸し始めて2年ですから、
しばりの対象になります。
2.例外
ただし、例外があります。
被相続人等が相続開始の日まで3年を超えて、
事業的規模で特定貸付事業を行っていた場合、
3年以内に新たに貸し始めた土地で
あっても貸付事業用宅地等として
特例の対象になります。
ポイントを整理すると、次の三つがそろったときに救済されます。
・3年超 …… 貸付事業を開始してから相続開始まで3年を超えていること
・事業的規模 …… 社会通念上「事業」と称する程度に達していること
・特定貸付事業 …… 準事業(事業未満)に該当しないこと
大切なのは、見るのがその土地単体ではなく、その方の貸付事業の全体だという点です。
たとえば、10年前からアパート10室を貸している方が、
2年前に新たに駐車場を始めたとします。
この駐車場だけを切り取れば貸し始めて2年ですが、
貸付事業全体としては3年を超えて
事業的規模で営まれているため、
新しく加えた駐車場の敷地も特例の対象になります。
もともと相応の規模で貸付けを営んでいる方が、
その延長で土地を一つ加えただけなら
「駆け込み」とはいえない、という考え方です。
3.駐車場の事業的規模は
では、事業的規模かどうかは、どう判定するのでしょうか。
所得税の不動産所得で使う「5棟10室基準」に準じて判定します。
おおむね独立した10室以上、独立家屋なら5棟以上が目安です。
駐車場は、5台分を1室に換算します。
駐車場だけで判定するなら、
50台でようやく10室相当。
アパートとの合算もできますから、
たとえばアパート8室と駐車場10台なら、
8室+2室=10室で事業的規模となります。
ここで、まぎらわしい話を一つ整理しておきます。
個人事業税の「駐車場業」の
基準とは、まったく別物だということです。
例えば、神奈川県の場合、
青空駐車場なら収容可能台数10台以上で
駐車場業と認定され、個人事業税の課税対象になります。
立体式などの建築物である駐車場なら、
台数を問わず駐車場業です。
つまり、20台の月極駐車場を営む方は、
県から「駐車場業という事業だ」として
個人事業税を課されながら、
小規模宅地等の特例では事業的規模に届かない、ということが起こります。
事業税を納めているかどうかは、
特定貸付事業の該当性を
判断する決め手にはならないということです。
あくまでも所得税基本通達26-9の枠組みで
事業的規模を判定していきます。
4.まとめ
貸駐車場に小規模宅地等の特例を使うには、
貸し始めてから3年を超えていることが要件となっています。
3年に満たない場合でも、
貸付事業の全体が3年を超えて
事業的規模であれば、
例外として救われます。
ただし駐車場は5台で1室の換算ですから、
駐車場だけでその規模に達するのは容易ではありません。
事業的規模の判定は実態しだいで
分かれる場面も多いので、
迷ったら専門家にご相談ください。
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