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申告期限前に駐車場を売却。小規模宅地等の特例はどうなる?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第272回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。


Q
父が亡くなり、
長年営んでいた月極駐車場
(200㎡・アスファルト舗装)を私が相続しました。
父から生前「相続税の納税のために売却するように」
と言っていたため、売却に出しています。
納税そのものは金融機関からの借入れでまかない、
売却代金で返す段取りです。
買主が見つかり、相続税の申告期限の
1か月前に売買契約を結ぶ予定です。
引渡しと残金決済は、申告期限の2か月後になる見込みです。
申告期限までに売買契約を締結すると、
小規模宅地等の特例は使えなくなるのでしょうか?

A
売買契約を結んでいても、
引渡しがまだで所有権が移っていなければ、
小規模宅地の減額は適用できます。
ただし、駐車場ならではの落とし穴があります。

1.申告期限まで続けるべき二つのこと
貸付事業用宅地等として特例を受けるには、
相続開始の時から相続税の申告期限まで、
次の二つを満たしている必要があります。
・その宅地等に係る被相続人の貸付事業を引き継ぎ、
申告期限まで貸付事業の用に供していること(事業継続)
・その宅地等を申告期限まで引き続き有していること(保有継続)

この特例が守ろうとしているのは、遺された家族の生活や事業の基盤です。
相続してすぐ手放すような土地まで面倒を見る制度ではない―
―だから、申告期限までは続けてくださいという条件が付いています。
申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月。
ここが一つの区切りになります。

2.「有していること」は、所有権のこと
ここでいう「有していること」とは、
その宅地等の所有権を有していることを意味すると解されています。
契約を結んだかどうかではありません。

不動産の売買では、
契約を結んでから引渡しと残金決済までに、
数か月の間が空くことも珍しくありません。
その間、所有権はまだ売主の手元にあります。

ですから、申告期限までに売却の契約を締結していても、
その所有権が移転していなければ、
申告期限まで引き続き宅地等を有しているといえます。

事業継続の要件についても同じです。
申告期限までに売却契約を締結していても、
引渡しが申告期限後であれば、
申告期限の時点ではまだ貸付事業の用に
供していると考えることになります。

なお、これは国税庁の公式見解ではなく、
実務上の見解です。

3.駐車場だからこそ、危ない
駐車場は、建物も借家人もないぶん売りやすい資産です。
「いざとなったら売ればいい」と、
あえて駐車場のままにしておられるオーナーも少なくありません。
ところが、その身軽さが、
そのまま落とし穴になります。

(1)更地で引き渡す約束をしてしまう
買主が自分で建物を建てる場合、
舗装を撤去して更地で引き渡すよう
求められることがあります。
これに応じて申告期限より前に
アスファルトを剥がしてしまうと、
その土地は構築物の敷地ではなくなります。

小規模宅地等の特例の対象は、
建物又は構築物の敷地の用に
供されている宅地等に限られます。
舗装を剥がした瞬間、適用要件を満たさなくなります。

(2)先に利用者を退去させてしまう
引渡しに向けて、契約者の方々に解約を通知し、
順に出ていってもらう。段取りとしては自然です。

しかし、申告期限より前に全区画が空になり、
しかも新たな募集も止めているとなると、
貸付事業が続いているとはいえなくなります。

空いているだけなら一時的な
空き区画として扱える余地がありますが、
事業をたたむ方向での空きは、それとは違います。

(3)引渡しを前倒しされる
買主の都合で決済を急ぎたいと言われ、
当初の予定より早く引き渡す。
これで所有権が申告期限前に移れば、
保有継続の要件を満たせません。

アパートであれば、
借家人がいるため簡単には空にできず、
建物の取壊しにも時間がかかります。
その不自由さが、結果として要件を守ってくれます。
駐車場は、そうした制約がないぶん、うっかり壊しやすいのです。

4.引渡しを遅らせても、譲渡の特例は失わない
相続した土地を売るときには、
納めた相続税の一部を取得費に
加算できる特例があります(租税特別措置法39条)。

この特例を使えるのは、
相続開始のあった日の翌日から
相続税の申告期限の翌日以後
3年を経過する日までに譲渡した場合です。
相続開始から数えると、およそ3年10か月の猶予があります。

小規模宅地等の特例を守るために日取りをずらしても、
取得費加算まで失うことにはなりません。

5.動かすべきは、順序と日取り
売却そのものを止める必要はありません。
調整すべきは、順序と日取りです。
売買契約を結ぶこと自体は、
申告期限前でも構いません。
ただし、次の点に気を付けてください。
・引渡し日を申告期限より後に設定し、
契約書に明記する
・更地での引渡しを求められた場合、
撤去工事の着手を引渡し後にする
・利用者への解約通知の時期を、
引渡し日から逆算して決める

売却を予定しているなら、
まず申告期限がいつかを確かめ、
そこから逆算して段取りを組むことです。
判断に迷う場面も多いので、
売買契約の内容や引渡しの条件を整理したうえで、
契約前に専門家にご相談ください。

ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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