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そもそも二次相続先を指定できるの?

東京の中心で税務を叫ぶ 第118回コラム

そもそも二次相続先を指定できるの?

大家さん
大家さん

そもそも二次相続先を指定できるの?

大野
大野
今回はそもそも二次相続先を指定できるの?
についてお話します。

こんにちは!
今回は、二次相続についてご質問頂いたので回答いたします。

Q
先祖代々の土地に賃貸アパートがあります。
相続人は、妻だけで子供はいません。
この不動産は、妻へ相続後、妻が亡くなると
妻の親族のもとへ渡ってしまうと思います。
先祖代々の不動産なので、妻に相続させた後には、
私の弟の息子(甥)に相続させたいと考えています。
遺言書に、その旨を記載すれば、甥に相続させることはできるのでしょうか?

A
ご本人から奥様への相続を「一次相続」、
奥様から甥への相続を「二次相続」と言いますが、
ご本人の遺言書に二次相続のときの相続先を記載しても無効となってしまいます。
あくまでも、奥様が亡くなった際に誰に相続するかを遺言できるのは、
奥様だけだからです。

また、ご本人の遺言書に、甥に直接相続(遺贈)する旨を記載すれば、
ご本人から甥に直接渡すことはできますが、これですと、
賃貸不動産から発生する家賃収入などのお金が、すべて甥に行くために、
奥様の生活がご心配になるかと思います。

そこで、活用できるのが、家族信託です。
家族信託とは、財産を持つ人が、財産の管理や承継など、
特定の目的のために不動産や預貯金などを信頼できる家族や親族などに託し、
管理・処分を任せる仕組みです。

今回のケースでは、信託財産(賃貸不動産)の管理を甥に委託して、
信託財産から発生する利益を奥様が受け取るように信託契約を結べば、
一次相続後も奥様は家賃収入などのお金を得ることができます。

また、奥様の死亡後は、信託財産の承継先を甥と設定することができます。
これにより二次相続の際に賃貸不動産を甥に渡すことができます。

これを後継ぎ遺贈型の「受益者連続信託」といいます。
ただ、この受益者連続信託には注意点があります。

①期間制限
信託法第91条により、「当該信託がされた時から
30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより
受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで
又は当該受益権が消滅するまでの間、
その効力を有する」とされています。

つまり、家族信託を開始してから30年が経った後に、
新たに受益権を取得した受益者が亡くなることにより信託契約は自動的に終了します。

今回のケースでは、信託契約後30年経過した後に、
奥様に受益権が継承された場合は、
甥への受益権は承継できないことになりますのでご注意ください。
なお、30年以内に奥様へ受益権が継承されれば、甥へは承継できます。

②相続税
受益者連続型信託の場合、受益者の死亡により受益権が移転する度に、
新たに受益者となる者に対して相続税が課税されることになります
(相続税基本通達9の3-1)。

③遺留分請求
受益者連続型信託による受益権の承継であっても、
遺留分侵害額請求の対象となる可能性があります。
ただ、第二次受益者(甥)が受益権を承継する際に遺留分請求の対象となるかは、
判例などが出ておらず不明確な状況です。
もし遺留分請求が認められて、甥が支払うことになった場合、
そのお金がなければ承継した土地を売却せざるを得ないかもしれません。

そうならないためにも、信託契約を結ぶにあたっては、
将来の相続人を含めた関係者の理解を事前に得ておくことが重要だと思います。
後々、知らされていなかったとなると、
負の感情が芽生え、トラブルになる可能性もあります。
信託契約を結ぶ形での相続が
ご本人の希望であることを事前に皆様にお話頂くのがよろしいと思います。

まとめ

①受益者連続信託を利用すると二次相続先を指定できます。

②信託契約後30年以内に一次相続が発生しないと、指定した二次相続先に承継できなくなります。

③二次相続した人が、他の相続人から遺留分請求される可能性があるのでご注意ください。

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楽待 不動産住宅新聞でもコラム連載しています。

ABOUT ME
大野晃男
1979年12月生まれ。 資格専門学校の簿記講師を経て税理士法人に勤務。 その後、自動車部品製造会社の経理として働く。 実家がサラリーマン大家さんだったことから、 渡邊浩滋総合事務所に興味を持ち、入所。
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