東京の中心で税務を叫ぶ 第66回コラム
そもそも「法人ごと売却」って何?
そもそも「法人ごと売却」って何?
法人が所有している物件を売却しようと考えたときに、
不動産を売却するのではなく、
不動産を所有している「法人ごと売却」する方法があります。
これについて詳しくお話ししたいと思います。
こんにちは!
法人が所有している物件を売却しようと考えたときに、
不動産を売却するのではなく、
不動産を所有している「法人ごと売却」する方法があります。
「不動産M&A」と呼ばれたりします。
では、不動産を売却する場合と比べて、法人ごと売却する方法のメリットは何でしょう?
実は、売却により得たお金を個人に移すときにちがいが出てきます。
不動産で売却した場合には、売却収入は、法人に入ってきます。
このお金を個人に渡そうとした場合には、役員報酬や配当で渡すことになります。
役員報酬で渡す場合には、個人の給与所得となるため、所得税・住民税がかかってきます。
さらに社会保険料の負担も増える可能性があります。
配当で渡す場合には、個人の配当所得となるため、
所得税・住民税がかかってきます。
社会保険料の負担はありませんが、会社が配当を出しても、会社の経費にはならないため、
法人税等の負担が大きくなる可能性があります。
個人が受け取る給与所得、配当所得は総合課税となるので、
超過累進税率(所得が高くなればなるほど税率が高くなる)が適用されます。
つまり、個人に移す金額が多額になれば、
所得税・住民税合わせて最高で55%の税金が取られる可能性があります。
それに対して、法人ごと売却する場合は、売却収入は、株主である個人に入ってきます。
しかも、株式の譲渡に係る譲渡所得は、
分離課税で所得税と住民税合わせて20.315%です。
つまり、低い税率で個人にお金を流すことができます。
会社を清算してやめるつもりであれば、会社ごと売却した方がよいと思います。
会社を清算するつもりではなく、
売却しても、新しい不動産を購入するなどで会社を存続させるなら不動産で売却した方がよいと思います。
なお、「法人ごと売却」には注意点もあります。特に手数料の問題です。
不動産での売却の場合、仲介してもらった不動産会社に支払う仲介手数料の上限が法律で決められています。
一方、法人ごと売却(不動産M&A)の仲介会社の手数料を規制する法律はなく、仲介手数料の上限が定められていません。
宅建のような免許も必要ありません。
場合によっては、高額な仲介手数料を請求されることもありますので注意が必要です。
まとめ
①会社を清算するなら「法人ごと売却」も選択肢の一つ
②「法人ごと売却」は、会社の株式の売却となり、分離課税で税率は一定(20.315%)
③「法人ごと売却」は、仲介手数料に上限がないので高くつく
可能性があります。
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楽待 不動産住宅新聞でもコラム連載しています。