『賃貸オーナー向けの火災保険について』
こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの駒崎です。
今月の特集では、賃貸オーナー向けの火災保険について、
保険金の請求事例や新しい補償内容など、
賃貸経営に役立てる方法を解説いたします。
【第1回】水災は“全国どこでも発生するリスク”です。
火災保険の補償内容、確認していますか?
昨今、台風や線状降水帯による豪雨災害が各地で頻発しており、
水災リスクはもはや「特定の地域」や「川沿い」に限定されるものではありません。
事実、過去10年間で全国市町村の約98%が
1回以上の水害を経験しており、河川が近くなくても、
豪雨の際の排水不良による内水氾濫や、
土砂崩れによって建物が浸水被害を受ける
可能性があることが報告されています。(出展:内閣府)
「高台にあるから大丈夫」「ハザードマップでリスクが低いから安心」
と思われている方こそ、今一度水災リスクを見直す必要があります。
◆ 水災による被害は、想像以上に“高額”
実際に水災が発生すると、以下のような費用が重くのしかかります。
●建物の修理費用・付属設備の買替費用
●泥水流入後の床清掃・消毒・乾燥費
●建物備え付けの家具・家電等の撤去費用
●浸水による退去での家賃収入減少
例えば、2020年7月の豪雨では、
河川の氾濫により建物・家財が水没し、
被害総額が約3,080万円に上る事例が確認されています。
同様に、2019年の台風19号では、
河川の氾濫によりマンション1階が水没し、
被害総額が約1,800万円、
2022年の台風15号では床上浸水が発生し、
フローリングや壁等の被害総額が約1,200万円の損害が発生しています。
浸水の深さが床上か床下かによって
保険金の支払いがされるか分かれるケースも多くなっています。
◆ 火災保険で「水災リスク」に備えるためのポイント
火災保険では、水災補償の有無が保険会社やプランによって異なります。
賃貸オーナーが特に検討すべきは、以下の2点です。
① 水災補償付きプランの選択
水災による建物の損害、復旧費用等が補償されます。
条件としては、次のようなケースが補償対象となります。
✔ 床上浸水、または地盤面から45cmを超える浸水
✔ 再調達価格の30%以上の損害を被った場合
建物の構造や築年数にかかわらず、
広範囲に及ぶ大雨があれば、
どの地域でも該当する可能性があります。
保険会社によっては、水災補償限度額を設定し、
保険料が安くなる設定もあります。
② 補償対象外リスクへの理解と対策
一部のプランや古い契約では、
水災が「補償対象外」となっていることがあります。
水災補償は、途中から火災保険の契約に付けることができないため、
火災保険の入り直しが必要となります。
そのため、余剰資金もしっかりと準備して頂くことも必要です。
また、浸水によって部屋が使用不能になり、
入居者退去後の復旧期間中の空室が発生することを踏まえて、
家賃収入補償を追加することで、収益面の損害もカバーできます。
◆ まとめ:水災補償の見直しは、経営の“お守り”
賃貸経営において、物件の立地条件が万全であるとは限りません。
仮に建物が無事だったとしても、
近隣道路の冠水や入居者の生活インフラ停止により、
結果として退去や修繕対応が必要になる事態は少なくありません。
地球温暖化によって豪雨が頻発し、
さらに水災が増加する可能性がありますので、
この機会に、火災保険の内容をご確認いただき、
水災補償が適切に付帯されているか、今一度チェックしてみてください。
次回(第2回)は「地震による火災リスク」と、
それに備えるための火災保険特約について解説します。
