「想定外の金額負担」3つのケース
~分譲マンション投資の魅力~
分譲マンション投資において、
物件の利回りや立地条件を重視する投資家は多いものの、
管理規約の精査を怠る方は少なくありません。
今回は、管理規約をしっかり読み込まなかったために
発生する「想定外の金額負担」について、
具体的なケースを交えて解説します。
1.非居住オーナーに課される「役員辞退金」
投資用としてマンションを購入する場合、その物件に住むことなく賃貸に出します。
このとき、購入者は「非居住組合員」あるいは「不在組合員」となります。
多くのマンションでは「役員は現に居住する組合員から選出する」
と定めています。
非居住オーナーが増加したマンションでは、
居住している区分所有者だけで理事会を運営しなければならず、
その負担が一部の住民に集中してしまいます。
そこで近年、非居住オーナーに対して「組合運営協力金」や
「役員辞退金」の名目で、
毎月一定額を追加徴収する管理規約を定めるマンションが増えています。
金額は月額数千円程度が多いようですが、
年間で見れば決して小さな負担ではありません。
この協力金制度については、平成22年の最高裁判決において、
合理的な範囲内であれば非居住オーナーへの
不利益が受忍限度内として有効とされた判例があります。
つまり、管理規約にこうした規定がある場合、
投資家としてはこの負担を受け入れざるを得ないのです。
購入前には必ず管理規約の「管理組合の運営」や
「役員」に関する条項を確認し、
非居住オーナーへの追加負担の有無を把握しておきましょう。
投資利回りに大きく影響します。
2.管理費が突然増加するケース
管理費の値上げリスクを見極めるには、
管理規約における改定手続きの規定を確認することが重要です。
管理規約の本文や別表に管理費の具体的な金額が明記されている場合、
その変更は「規約変更」に該当します。
規約変更には総会の特別決議が必要であり、
区分所有者数および議決権数の各4分の3以上の賛成が求められます。
このため、値上げのハードルは比較的高く、
投資家にとっては安心材料となります。
一方で、管理規約に金額を明示せず「別に定める」
「細則で定める」といった表現で管理費を規定している場合は要注意です。
この場合、金額自体は規約の一部とみなされないため、
通常の総会決議(普通決議)で改定可能となります。
普通決議は過半数の賛成で成立するため、
値上げが比較的容易に行われる可能性があります。
具体的なリスクとしては、
人件費の高騰による管理会社への委託費用の増加、
設備の老朽化に伴う維持管理費の増大、
電気料金などの光熱費の上昇、
そして保険料の値上げなどが挙げられます。
これらの要因により、
管理費が数年で1.5倍になるケースも珍しくありません。
また、過去の総会議事録にも目を通し、
直近で値上げ検討があればその理由も確認しておくと安心です。
3.修繕積立金が大幅に増加するケース
修繕積立金の増加は、
採用されている積立方式によって将来の負担が
大きく変わることを理解しておく必要があります。
修繕積立金の積立方式には、主に「均等積立方式」と
「段階増額積立方式」の2種類があります。
均等積立方式は、
長期修繕計画で計画された修繕工事費の累計額を
計画期間中に均等に積み立てる方式です。
将来の目標金額に向かって的確に管理が行えるため、
金額変更に伴う合意形成を繰り返し行う必要がなく、
国土交通省が推奨している方式です。
一方、段階増額積立方式は、
新築当初の積立額を低く抑え、
一定期間経過後から段階的に増額していく方式です。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によれば、
平成27以降に完成したマンションの約8割が
この段階増額積立方式を採用しています。
新築マンションの販売において、
分譲会社は購入のハードルを下げるために修繕積立金を
低く設定する傾向があります。
購入時の月々の負担が軽く見えるため、
投資家も安心して購入してしまいがちです。
しかし、国土交通省の調査によれば、
段階増額積立方式を採用している249のマンション事例において、
計画当初から最終計画年までの値上げ幅の
平均は約3.58倍に達しています。
さらに、上位6分の1にあたる42事例では、
平均値上げ幅が約5.3倍にもなっています。
段階増額積立方式のもう一つの問題点は、
計画通りの値上げが実現しないリスクです。
修繕積立金の増額には総会での合意形成が必要ですが、
大幅な値上げ案に対しては反対意見が多く、
議決が通らないケースも少なくありません。
計画通りの値上げができなければ、
修繕積立金の不足が発生します。
その結果、大規模修繕工事の際に各戸から
数十万円から百数十万円規模の一時金を徴収されたり、
管理組合が金融機関から借入を行い、
その返済のためにさらなる積立金の増額が
必要になったりする事態も起こり得ます。
こうした問題に対処するため、
国土交通省は令和6年6月に
「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を改定しました。
新しいガイドラインでは、段階増額積立方式における
適切な引上げの考え方として、
計画の初期額は均等積立方式の基準額の0.6倍以上、
計画の最終額は基準額の1.1倍以内とすることが示されています。
つまり、最大でも約1.8倍程度の値上げ幅に
収めることが望ましいとされているのです。
この基準を超える大幅な値上げが計画されているマンションは、
将来的なリスクが高いと判断できます。
また、過去に一時金徴収や借入が行われた形跡がないかも確認しましょう。
4.まとめ
管理規約は、投資家にとっては
「将来の費用負担を予測するための設計図」でもあります。
非居住オーナーへの協力金、管理費の改定ルール、
そして修繕積立金の積立方式という
3つのポイントを購入前に確認することで、
想定外の金額負担を避けることができます。
一つ一つ丁寧に確認していけば、必ず優良物件を見つけることができます。



