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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第450回】不動産鑑定士・住宅診断士
皆川 聡が斬る!①

賃貸住宅オーナー様が直面する
「地価上昇局面」の課題と戦略」

こんにちは、今月担当の不動産鑑定士・住宅診断士の皆川聡です。
先日発表されました令和7年の基準地価も含めまして、
今回は、『賃貸住宅オーナー様が直面する「地価上昇局面」の課題と戦略」
について記載させていただきます。

令和7年の基準地価・公示地価は、いずれも全国平均で上昇を続け、
住宅地も13年連続のプラスとなりました。
都市部の駅近や生活利便性の高い地域を中心に地価上昇が続いており、
アパートやマンションを所有する皆さまのようなオーナー様にとりましては、
「資産価値の押し上げ」としてプラスの効果が期待できます。
しかし同時に、収益不動産の運営には新たな課題も浮き彫りになっています。
第一に、収益性の圧迫 です。

地価上昇や建築コスト高騰により、新規建築の採算性は低下しています。
既存物件のオーナー様にとっても、修繕費や管理コストの上昇は避けられず、
純収益(NOI)の確保が難しくなっています。

鑑定評価の場面でも、
キャッシュフロー見込みを保守的に設定する傾向が強まっており、
利回り水準を見直す動きが出ています。
オーナー様としては、修繕計画の長期シミュレーションや、
費用対効果の高い改修戦略を早めに描くことが重要です。
第二に、エリアごとの二極化 (または三極化)が進んでいる点です。
都市中心部や人口流入の見込める地域では、
賃貸需要の強さが資産価値を支えています。

一方で、地方や郊外の物件では、
空室率上昇や賃料下落圧力に直面するケースも増えています。

オーナー様に求められるのは、
単に「保有し続ける」姿勢ではなく、
資産の入れ替えを含めたポートフォリオ戦略です。

需要が先細るエリアの物件は早めに売却し、
利便性や再開発ポテンシャルを持つエリアへ再投資する判断が、
今後の収益安定化に直結します。
第三に、入居者ニーズの変化 にどう応えるかです。
近年は単身者向け小規模住宅だけでなく、
共働き世帯向けの広さや収納力を備えた間取り、
さらに高齢者対応のバリアフリー化など、
多様な住まい方が求められています。
また、省エネ性能やインターネット環境の整備は、
入居促進の必須条件となりつつあります。

鑑定評価上も、
こうした付加価値が賃料持続性や稼働率に反映されるため、
投資判断に欠かせない要素です。
さらに忘れてはならないのが、リスクシナリオへの備えです。
金利上昇はローン返済負担を増加させ、
災害リスクは建物価値や賃料収入に直撃します。

こうした不確実性を前提に、
長期修繕積立・保険加入・賃料下落シナリオの想定など、
複数のストレステストを導入することが不可欠です。
結論として、地価上昇局面は賃貸住宅オーナー様にとって
「資産価値の向上」と「収益性圧迫」という二面性を持ちます。
市場全体の上昇に安堵するのではなく、
立地の将来性を見極め、物件価値を磨き、
ポートフォリオを適正化する姿勢こそが、持続的な安定収益につながります。
鑑定士の評価眼を活かしつつ、
保有と売却、新規投資と改修を組み合わせた柔軟な戦略を描くことが、
これからのオーナー様に求められる最重要の経営判断と言えるでしょう。
今回はここまでとさせていただきます。
皆様のお持ちの物件の資産形成の一助としてご活用いただきまして、
少しでも皆様のご参考になれば幸いです。
今回も最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
以上

ABOUT ME
皆川聡
株式会社Aoi不動産鑑定 大手不動産鑑定会社に約8年従事し、メガバンク、政府系金融機関、地銀、信用金庫、信用組合などの金融機関の担保評価をメインに約2500件の案件を携わり、国際線ターミナルの評価の実績もあり。 退職後、平成27年4月に開業。 開業後は、税務対策の鑑定評価や裁判調停等の鑑定評価での多数実績。住宅診断を反映した鑑定評価にて、より清緻な鑑定評価を行っており、鑑定評価額だけではなく、皆様の建物の日ごろのメンテナンスのポイントなどもご提案し、ご好評をいただいております。また2020年10月には、相続税の還付請求にて、他の不動産鑑定士が国税不服審判所にて否認された案件を、その後当職が不動産鑑定を担当。圧倒的な不動産鑑定評価により、東京地裁において、国税庁との裁判で無事完全勝訴しております。
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