渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第259回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q
近隣の方に1台ずつ貸しています。
賃貸アパートの敷地は「貸家建付地」として
相続税評価が下がると聞きました。
私の駐車場も第三者に貸しているのですから、
同じように相続税評価を下げられるのではないでしょうか?
A
ご自身で区画を引き、利用者に1台ずつ貸している月極駐車場は、
相続税では原則として自用地、
つまり「他人に貸していない、自分で使っている土地」
と同じ評価になります。
賃借権の分を差し引くことは、原則としてできません。
「第三者に貸して駐車料金をもらっているのに、なぜ?」
と思われるかもしれません。
詳しく解説していきます。
1.相続税で土地の評価が「下がる」仕組み
そもそも、相続税の土地評価で
「減額」が生まれるのはなぜでしょうか。
理由はシンプルで、その土地に「強い権利を持った借り手」がいて、
地主が自由に使えなくなっているからです。
借り手の権利が強いほど、
地主の手元に残る価値は薄くなり、評価も下がります。
そして、この借り手の権利を強くしているのが借地借家法です。
借地借家法は、
(1)建物を所有するために土地を借りる場合と、
(2)建物そのものを借りる場合に借り手を手厚く保護します。
契約期間が長く確保され、貸主からの更新拒絶には
「正当の事由」が必要で、簡単には追い出せない
――こうした強い保護が、土地評価の減額の源泉になっているのです。
代表的な例が二つあります。
ひとつは、建物所有を目的として土地を貸すケース。
借り手には「借地権」という強い権利が生じます。
この場合、地主の土地(底地)は「貸宅地」として、
自用地としての価額から借地権の価額を差し引いて評価します。
算式は〔自用地としての価額×(1−借地権割合)〕です。
借地権割合は都市部の住宅地でおおむね60〜70%ですから、
地主の土地は自用地の3〜4割程度の評価まで下がることになります。
もうひとつは、アパートのように建物を貸すケース。
入居者には借地借家法が守る「借家権」が生じ、
その権利は建物の敷地の利用にも及ぶとみます。
そこでアパートの敷地は「貸家建付地」として、
〔自用地としての価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)〕
で評価します。
借家権割合は全国一律30%です。
つまり、借地借家法による
借り手保護が強いほど評価は大きく下がる、
という関係があるのです。
2.駐車場は借地借家法の外にある
駐車場の貸し借りは、
「建物を所有するために土地を借りる」のでも
「建物を借りる」のでもありません。
利用者は、ただ車を停めるだけです。
したがって、駐車場の利用契約には借地借家法が適用されません。
借地権も借家権も生じず、
利用者には土地を継続的に支配する強い権利がないのです。
法的な中身としても、
「土地を使わせる」契約というより
「車という物を預かって保管する」契約に近いと整理されます。
差し引くべき強い権利がない以上、
評価上は権利の制約がない自用地として扱われます。
「第三者に貸しているのに下がらない」のは、
裏を返せば、借地借家法の手厚い保護が駐車場には及ばないことの当然の帰結なのです。
なお、地目は登記上「宅地」でも、
相続税評価上は「雑種地」として扱うのが通常です。
3.業者に土地ごと貸すと“少しだけ”下がる
同じ駐車場でも、
コインパーキング業者などに土地を一括で貸し付け、
業者が精算機やフェンスを設置して運営している場合は、
扱いが変わります。土地全体を業者に貸しているため、
土地に「賃借権」という権利が発生していると考え、
自用地としての価額から賃借権の価額を差し引けるのです。
この業者貸付のケースは、
次回くわしく取り上げます。
4.まとめ
相続税の土地評価で減額が生じるかどうかは、
突き詰めると「借地借家法が借り手をどれだけ強く守っているか」
で決まります。建物のための借地なら大きく下がり、
アパート(建物の賃貸)なら中くらい下がり、
駐車場は原則として下がらず、
業者への一括貸付でようやく少しだけ下がる――という順番です。
自分で運営する月極駐車場が
下がらないのは損なのではなく、
見方を変えれば、借り手の権利が弱く、
地主が自由に使える土地だということでもあります。
売却や建替えといった出口の自由度は、
むしろ高いのです。
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