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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第231回】
不動産鑑定士×一級建築士 田口 陽一が斬る!④

~新型コロナウィルスが写しだす今後の不動産~

今月号は、一級建築士・不動産鑑定士の田口陽一より、お届けしています。

新型コロナウィルスが世界規模で猛威を振るうなか、
新型コロナウィルスによりお亡くなりになられた方々に
心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、
罹患された方々に心からお見舞いを申し上げます。

日本のみならず世界中で新型コロナウィルス感染が拡大し、
社会全体が変容する中、不動産への影響は??

前回まで、我々の暮らしや価値観を掘り下げ、
不動産市場について概観しました。
これまで数年間、ほぼ一本調子で堅調だった不動産市場ですが、
コロナ渦で変調していることを確認してきました。

最終回の今回。

今後の不動産投資、不動産保有は、どのように取り組むべきでしょうか。

■コロナと不動産戦略
<コロナ後も有効需要が見込める不動産>
・都心部を中心とした利便性に優れる不動産
・災害対策が施された不動産
・新しい生活様式や働き方を取り込んだ設計に基づく不動産
・バーチャルとリアルが再整理される中でリアルの価値を発揮できる不動産
・耐震性能確保に向け建替推進が加速する不動産
・職住近接が実現できる不動産
・時間価値や時短に着目した不動産
・分散化・多様化・複層化に対応した不動産
・恒常的な低成長時代にも確実なリターンが得られる不動産
・交通インフラのさらなる拡充が見込まれる不動産

<用途別>
・住宅市場については、
在宅勤務環境、多様な働き方・生活スタイル等、
こういったものに対応した住宅は着実な需要が見込めるものと思います。
これまで一部で異常に高騰してきた物件には調整が入るものと思います。
本来の実力の水準に巻き戻されると考えます。
ただ、単純に郊外化が進むとは思えません。
職住近接は今後もキーワードだと思いますし、
リアルコミュニケーションの価値はこれまで以上に際立ったように思います。
これからは全てリアル、全てバーチャル、という一律なものではなく、
使い分けの時代になるのではないかと思います。
また、ハードウェア的なものより、時間の相対的価値が
これまで以上に高まっていると思います。
あくまで今後も、都心部を中心として様々な都市機能が集積し、
堅調な傾向が続くと思います。
ただ、今後の不透明感が払拭されるまでは、高額な物件への需要は限定的となりましょう。

オフィス市場では、
ただ都心に大きなオフィスビルを建てればよい、
という開発思想は通用しなくなるかもしれません。
企業経営の多様化、変化への支援、複数拠点分散、防災性等に対応し、
リアルコミュニケーションの価値を積極的具体的に提案できる
オフィスビルが勝ち残るのかもしれません。

物流市場では、
郊外の大規模な物流施設の開発は今後も継続し、
さらに都市部に点在する築年数の古い倉庫等の建替え促進が考えられます。
ある意味で、バーチャルとリアルの接点である物流施設は、
そのオペレーションの自動化も進められる一方で、恒常的に人材不足の業界でもあります。
職住近接の小中規模の物流・配送拠点は、                                                         これからもよりニーズが増大するものと思われます。

商業市場では、
リアル店舗とeコマースとの関係性がより緻密に設計されるものと思われます。
リアル店舗がそのリアルであることの価値を発揮できる不動産は、
今後も強いと思います。
“自粛疲れで早く外出したい”
という人間の心理がどれだけ強いものか、今回確認できました。
ただ単にネットショッピングしても充足できない価値が
リアルにはあるという証左かもしれませんね。
また、そういった緻密な設計ができる
小売・飲食のプレイヤーが今後の商業不動産を盛り立てていくことでしょう。

リゾート市場では、
外国人のインバウンド投資は当面調整局面に入るのかもしれません。
現状の深刻な出入国数の落ち込みから回復時期を予測するのは困難です。
ただ、日本人の働き方や生活様式の多様化から、
ワークライフバランス、余暇の過ごし方、多拠点居住等々との関連で
新たな実需ニーズが生まれる可能性もありますね。

*****

以上は私の感性に基づくものです。

捉え方、分析も、皆さまそれぞれ、様々でしょう。
様々だからこそ、市場が活性化します。

投資は自己責任ですが・・・
少しでもヒントがあれば幸いです。
そしてその気付きを是非行動へ移して頂ければと思います。

 

ABOUT ME
田口陽一
明治大学理工学部建築学科卒業。一級建築士、不動産鑑定士、宅地建 物取引士、マンション管理士。東京建物株式会社にて、不動産鑑定評 価、都市再開発、オフィスビル売買・運営、SPCスキームを活用した 不動産事業等、理論・実務の両面から不動産業務を経験し実績を残す。 不動産ソリューションは、実践的経験が何より重要であるばかりでな く、建築・税・法務・金融・理論的評価・現実の売買等々、複合的領 域にわたることから、常に複眼思考でベストな解決策を構築している。 鑑定評価や売買のみならず、バランス重視のハイブリッドなアドバイ ザリーを得意とする。
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