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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第303回】弁護士 関 義之が斬る!     「株式の承継について」 その1

●「株式の承継について」

こんにちは。弁護士の関です。

今月は「株式の承継について」を書いていきます。

●株式会社の事業承継対策

大家さんには、個人事業主として賃貸事業を営む方もいれば、
資産管理会社を設立し、会社経営を選択している方もいます。
会社経営を選択する場合にも、株式会社ではなく、
合同会社を選択するケースも増えていて、以前に、
合同会社の特集記事を執筆しました。

今回は、伝統的な株式会社で賃貸事業を営んでいる大家さんを想定し、
事業承継のために、“株式”についてどのような対策を講じておくべきか、
主に“トラブルを予防する”という観点から、基本的なポイントを解説します。

●事業承継対策の必要性

なぜ、株式について事業承継対策を講じておかなければならないか、
それは、“法定相続”を回避するためです。
株式について、生前の対策として選択できる承継方法としては、
大きく、売買、生前贈与、遺言(遺言相続)があり、
ほかに、信託を利用することもあります。
このような生前の対策を行わないで株主が亡くなると、
その株主が保有していた株式については法定相続の対象となります。

法定相続とは、民法が定めたルールに従った相続の仕方をいいます。
この法定相続のルールでは、まず、株式については、
相続人が複数いる場合には、不動産と同じく、
複数の相続人間で共有(正式には「準共有」)の状態となります。
そして、その株式は、相続人間で法定相続分に基づき持ち合います。
例えば、Aさんが1万株保有していて、
相続人が、その妻、長男、次男の3人とします。
Aさんが亡くなると、この1万株について、1株1株が、
それぞれ3人の共有となり、
妻1/2、長男1/4、次男1/4の割合で持ち合います。この共有の状態を解消する、
例えば、妻が5000株、長男が2500株、
次男が2500株などと具体的に分ける場合には、3人で遺産分割が必要となります。

遺産分割は、相続人の確定→遺産の範囲の確定→
遺産の評価の確定→具体的相続分の確定→分割方法の確定
という流れで協議していきますが、
それぞれの場面で紛争になるリスクを秘めています。
例えば、相続人が多数いたり、遠隔地に居住していたり、
所在不明の場合には、話し合いを開催することすら一苦労ですし、
相続人間で仲が悪い場合にはなかなか協議がまとまりません。
遺産分割は協議で決まらなければ、
家庭裁判所での調停、審判へと進み、
解決までに何年もかかるケースもあります。

このように、法定相続になると、
相続人間でのトラブル、いわゆる“争続”が起こりがちですので、
これを回避するために、生前に事業承継対策が必要になるのです。
なお、トラブル予防だけではなく、もちろん、税金対策の側面もありますが、
この点は、今回は割愛します。

ABOUT ME
関 義之
「関&パートナーズ法律事務所 代表弁護士」 平成10年 3月に早稲田大学法学部を卒業し、 その年の10月に司法試験に合格。 1年半の司法修習を経て、平成12年10月から弁護士登録。 平成23年10月から中小企業診断士にも登録。 法人・個人を問わず幅広く紛争に関する相談を受け、 代理人として示談交渉や訴訟等に対応するほか、 契約書の作成・チェック等、 紛争が生じる前の予防法務にも力をいれている。 不動産の賃貸・売買や、 遺言・遺産分割・遺留分など相続に関する相談を、 幅広く受けている。 特に力を入れている分野は、中小企業の事業承継支援。 セミナー経験多数。 詳しくはWebサイト参照  https://seki-partners.com/
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