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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第291回】不動産鑑定士・住宅診断士
皆川 聡が斬る!①

建物の価値や残存耐用年数を判定するためには

皆様こんにちは。

不動産鑑定士・住宅診断士の皆川聡です。

今回より、今月4回は、私が担当させていただきます。

皆様、ある時点の「建物の価値」や「建物の残存耐用年数」を、
何で判定するでしょうか。

1.固定資産税の評価額 ?
2.建物の帳簿価額(簿価)?
3.建物の鑑定評価 ?
でしょうか。

 

1.固定資産税の評価額

固定資産税評価額は、いわゆる「評点方式」により、
市役所が、固定資産税評価基準によって算出がなされています。

固定資産税評価基準には、以下のように記載されています。

家屋の評価は、
木造家屋及び木造家屋以外の家屋の区分に従い、
各個の家屋について評点数を付設し、
当該評点数に評点一点当たりの価額を乗じて
各個の家屋の価額を求める方法によるものとする。

さらに

各個の家屋の評点数は、当該家屋の再建築費評点数を基礎とし、
これに家屋の損耗の状況による減点を行って付設するものとする。

木造家屋の評点数は、当該木造家屋の再建築費評点数を基礎として、
これに損耗の状況による減点補正率を 乗じて付設するとし、

評点数=再建築費評点数×経過年数に応ずる減点補正率

によって、求めるものとする。

としています。

評点が詳細になされているので、
課税の公平性は担保されるのでしょうが、
その評価方法により、木を見て森を見ずということになっている。
または、予め評価額の還付請求をされないように、
建物が新しい時期においては、低位に留めているという特徴があります。
逆に、法定耐用年数を超過しているのに、
残価率が20%では、どうも高いのでは???
という建物も見受けられたりします。

ですので、オーナー様が新築時より所有している間は、
課税が一般的に低位でよろしいのでしょうが、
築年数が古い物件のまま所有されている場合や
収益性が高い物件を売却される場合などには、
時価と大きくかけ離れることが多く見受けられる傾向があります。

2.建物の帳簿価額(簿価)について

建物の帳簿価額は、取得した時の取得原価を、
法定耐用年数に基づき、適正な期間損益計算を目的とする、
減価償却というルールで算出されています。

課税上のお話しですので、
どうしても課税の公平性や簡便性を第一義的にしています。

しかし、建物は、新築時の施工の質、地盤の状態、
雨風等による劣化の状況、
そして、大規模修繕の有無及びその施工の質により、
全く建物の状態が異なります。
その状態の良し悪しにより、価値が異なりますし、
さらに収益力の高い物件であれば、尚更です。

固定資産税評価も市役所の職員の方々が、3年に一度、
逐一同一市内にある建物全部を見ている余裕がないので、
現実的には個々の事象を反映することは困難と言えます。

3.建物の鑑定評価 について

そこで、鑑定評価では??
と思われますが、
上記条件を把握、認識するためには、
一般的な鑑定評価に加えて、
以下のような診断が必要になります。

その診断とは、建物のもつ
1.構造的な特徴
2.劣化の状態の確認
及び
3.劣化があればその修繕方法や費用相当額
の診断が必須になります。

これらが判明していないと適正な建物の評価は困難と言えます。

その為には、建物に詳しいだけではなく、
劣化状況やその修繕方法についても詳しい建物診断(住宅診断)ができる方と、
不動産鑑定士がコラボすることが必要になります。

そうすることにより、
1.まず、住宅診断士等により建物の物的な耐用年数を提示してもらう。
2.次に、その物的な耐用年数を基に、不動産鑑定士が、
その物件におけるこれまでの市況の趨勢と今後のトレンドを可能な範囲で予測した、
建物がもつ経済的な残存耐用年数の判定を行う。
3.それらを基に最終的な建物の価値判定が可能となると言えます。

今回はここまでとさせていただきます。

次回以降も宜しくお願い致します。
最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。

ABOUT ME
皆川聡
株式会社Aoi不動産鑑定 大手不動産鑑定会社に約8年従事し、メガバンク、政府系金融機関、地銀、信用金庫、信用組合などの金融機関の担保評価をメインに約2500件の案件を携わり、国際線ターミナルの評価の実績もあり。 退職後、平成27年4月に開業。 開業後は、税務対策の鑑定評価や裁判調停等の鑑定評価での多数実績。住宅診断を反映した鑑定評価にて、より清緻な鑑定評価を行っており、鑑定評価額だけではなく、皆様の建物の日ごろのメンテナンスのポイントなどもご提案し、ご好評をいただいております。また2020年10月には、相続税の還付請求にて、他の不動産鑑定士が国税不服審判所にて否認された案件を、その後当職が不動産鑑定を担当。圧倒的な不動産鑑定評価により、東京地裁において、国税庁との裁判で無事完全勝訴しております。
さらに詳しく知りたい方へ