渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第221回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q遺産分割協議において、不動産を多くもらう代わりに、
代償金を払うことになりました。
しかし、お金をもっていないため、元々所有する不動産を代償財産としたいのですが、可能でしょうか?
この場合、代償金となる価格はいくらになるのでしょうか?
他に注意点があれば教えてください。
A
1. 不動産を代償財産にできるか?
(1)代償分割とは
代償分割とは、遺産分割の方法の一つで、
共同相続人のうち1人または数人が相続財産を現物で取得し、
その代わりに他の相続人に対して債務(代償)を負担する分割方法です。
例えば、実家の土地建物(評価額5,000万円)を長男が単独で相続し、
代わりに次男に2,500万円を支払うというような場合です。
これにより、不動産を分割せずに済み、
実家を守りながら公平な遺産分割を実現できます。
(2)代償財産は現金以外でも可能
代償分割において支払う代償は、現金が多いですが、
代償財産として相続人固有の不動産を交付することは可能です。
ただし、この方法を選択する場合、
単純な現金での代償とは異なる税務上の取り扱いが発生することに注意が必要です。
2. 代償金となる価格
不動産を代償財産とする場合の価格は、代償とする時の時価になります。
この時価をどのように決定するかは、難しい問題です。
鑑定評価を取得すれば確実ですが、費用がかかってしまいます。
・公示価格の金額を採用する
・固定資産税評価額を0.7で割り戻した金額を採用する
・複数の不動産業者の査定額の平均値を採用する
などが考えられます。
どの評価方法を採用するかは、基本的に当事者(相続人)の自由です。
つまり、相続人全員が合意すれば、
上記のどの評価方法を採用してもよいですし、
それ以外の独自の評価額を設定することも可能なのです。
代償分割が相続人間の私的な取り決めであり、
全員が納得していれば、その合意が尊重されるからです。
しかし、下記の譲渡所得の問題もあるため、
ある程度、税務署から認めれられる時価を採用することが求められます。
3. 譲渡所得税に注意
国税庁のタックスアンサーでは、
「代償財産として相続人固有の不動産を交付した場合には、
遺産の代償分割により負担した債務を履行するための資産の移転となりますので、
その履行した人については、
その履行の時における時価によりその資産を譲渡したことになり、
所得税が課税されます。」と記載されています
所得税基本通達 33-1の5にも
「遺産の代償分割により負担した債務が資産の移転を要するものである場合において、
その履行として当該資産の移転があったときは、
その履行をした者は、
その履行をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。」
とあります。
税法上、不動産を他の相続人に渡す行為は、
「売却」と同じ扱いになるということです。
たとえ金銭のやり取りがなくても、
代償債務の履行という対価を得て不動産を譲渡したとみなされるのです。
そして、その売買金額は、履行したときの時価となるのです。
受け取った相続人は、履行したときの時価が取得費となります。
なお、代償分割によって負担した債務に相当する金額は、
代償した不動産の取得費には算入されません(所得税基本通達38-7)。
なお、相続により取得した財産を相続後3年10ヶ月以内に譲渡した場合、
支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例
(相続税の取得費加算の特例)があります。
しかし、代償財産として渡す不動産は「相続により取得した財産」ではなく、
元々所有していた財産のため、この特例は適用できません。
4.税負担を軽減するための対策
最も確実な方法は、不動産ではなく現金で代償金を支払うことです。
しかし、どうしても不動産で代償する必要がある場合は、以下の点を検討しましょう。
・所有期間が5年超の物件を選ぶ
⇒長期譲渡所得の税率(約20%)は短期(約40%)の半分になります。
・含み益の少ない物件を選ぶ
⇒取得価格と現在価格の差が小さい物件なら、譲渡所得税も少額となります。
場合によっては、第三者に売却して現金化した金額を代償金として
支払うことの方が有利になる場合もあります。
5.まとめ
不動産を代償財産とすることは法的に可能ですが、
譲渡所得税という思わぬ税負担が発生します。
相続税と譲渡所得税の両面から総合的にシミュレーションを行い、
最適な遺産分割方法を選択するためにも、
税理士等の専門家に相談するようにしましょう。
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