渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第264回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q
賃貸アパートの敷地と、
それに隣接する駐車場を所有しています。
駐車場は入居者にも、外部の方にも貸しています。
税理士から
「この土地をどう区切って評価するかで、評価額が変わります」
と言われました。同じ土地なのに、
区切り方で金額が変わるものなのでしょうか。
そもそも、区切り方は誰がどう決めるのでしょうか?
A
1.区切り方で、評価額は変わる
同じ土地でも、どこで区切って評価するか――これを
「評価単位」といいます――によって、
相続税評価額は変わります。
この区切り方は、
納税者が好きに決められるものではなく、
土地の使われ方によって決まります。
原則は、地目ごとに分けることです(財産評価基本通達7)。
地目は登記簿上の記載ではなく、
相続開始時点の実際の使われ方で判定します。
アパートの敷地は「宅地」、
駐車場は「雑種地」ですから、
原則としては別々に評価します。
ただし、地目が違ってもまとめて評価する例外が二つあります。
例外①は、一体として利用されている場合です。
このときは一団の土地とみて、
「主たる地目」からなるものとしてまとめて評価します
(財産評価基本通達7ただし書)。
ここでいう一体利用とは、
その駐車場が建物のために使われている関係を指します。
店舗と客用駐車場、
アパートと入居者専用駐車場が典型です。
駐車場が建物の効用を高める付属設備として働いているから、
地目が違ってもまとめるのです。
例外②は、一体利用ではないけれど、
まとめて評価するほうが合理的と認められる場合です。
市街化調整区域以外の都市計画区域で市街地的形態を形成する地域にある、
市街地農地・市街地山林・市街地原野・宅地と状況が類似する
雑種地――このうち2以上が隣接し、
形状や地積の大小、
位置などからみて一団として評価するのが合理的なときは、
まとめて評価します。
ここで注意していただきたいのは、
例外②の四つに「宅地」が入っていないことです。
宅地は、例外①(一体利用)に当たるときにしか、
他の地目とまとめられません。
隣り合っていても、貸駐車場と
自宅の宅地をまとめて評価することはできない、ということです。
決め手は「地続きかどうか」ではありません。
塀があるかどうかでもありません。
その土地が何のために使われているかです。
2.約576万円の差が出た裁判例
東京地判 平成25年8月30日の事例をみてみましょう。
アパート(4戸・満室)に隣接する
駐車場10台分のうち、貸していたのは5台分。
その5名の利用者のうち、
アパートの入居者はわずか1名で、
入居者専用の区画も設けていませんでした。
裁判所は、この駐車場はアパートのために
使われているとはいえない
――つまり一体利用ではない――と判断し、
駐車場部分を貸家建付地として評価することを認めませんでした。
さらに、この土地をいくつの評価単位に区切るかが争われ、
審判所は土地全体を1つの単位とみたのに対し、
裁判所はアパートの敷地と二つの駐車場に分けて3つの単位とみました。
その結果、評価額に生じた差は約576万円。
区切り方が違うだけで、これだけの金額が動いたのです。
入居者と外部の方が混在し、
専用区画も分けていないなら、
駐車場部分は一体利用と認められず、
貸家建付地評価から外れる可能性が高いといえます。
逆に、入居者専用の区画をきちんと分けて管理すれば、
少なくともその部分は一体で評価でき、減額を受けられます。
3.評価単位は、補正にも特例にも波及する
評価単位が効いてくるのは、
金額そのものだけではありません。
まず、画地補正です。
不整形地補正、奥行価格補正、
間口狭小補正といった補正は、
評価単位ごとにかかります。
土地を細かく区切れば、それぞれが小さく、
いびつな形になり、
補正が効いて評価は下がる方向に働きます。
次に、地積規模の大きな宅地(財産評価基本通達20-2)です。
三大都市圏で500㎡以上、
それ以外で1,000㎡以上という面積要件は、
土地の合計面積ではなく、評価単位ごとに判定します。
全体では500㎡を超えていても、二つに区切られれば、
それぞれが500㎡に届かず適用できない――ということが起こります。
そして、小規模宅地等の特例です。
どの部分が貸付事業用として使われていたのか、
その範囲は評価単位と連動します。
4.不合理な分割は認められない
土地を相続人で分けて取得した場合、
原則として、分割後の画地ごとに評価単位を判定します。
つまり、誰がどの部分を取得するかによって、
評価額が変わるのです。
では、評価を下げる目的で、
わざと細切れに分ければよいのでしょうか。
そうはいきません。
分割が著しく不合理と認められるときは、
分割前の画地を1画地として評価することになっています
(財産評価基本通達7-2(1)注書き)。
「著しく不合理」とされるのは、
たとえば道路に接しない土地(無道路地)を作り出す、
帯のように細長い土地(帯状地)を作り出す、
その地域の標準からみて極端に狭い画地を作り出す
――といった、分割後の土地が現在も将来も
有効に使えなくなるような分け方です。
補正を稼ぐためだけの不自然な分割は、認められません。
逆にいえば、
通常の宅地分譲でも見られるような合理的な分け方であれば、
結果として評価額が下がっても問題はありません。
「評価額が下がる=不合理分割」ではないのです。
5.まとめ
評価単位の判定が、画地補正、
地積規模の大きな宅地、
小規模宅地等の特例のすべての入口になり、
さらに遺産分割の仕方によっても変わってきます。
そして、その差は数百万円に及ぶことがあります。
一体利用といえるかどうかは、実態しだいで判断が分かれます。
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