渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第278回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q
アパートの入居者専用にしていた駐車場(10区画)のうち、
空いた2区画を近所の方に貸しました。
固定資産税の住宅用地の軽減は、
駐車場全体でなくなってしまいますか?
全部はなくなりません。外部に貸した分だけ外れ、
残りは住宅用地のままです。
ただし、相続税の評価は別です。
こちらは、駐車場全体が減額から外れることがあります。
1.固定資産税は、面積で切り分ける
住宅用地にあたるかどうかは、
一画地の土地について判断します。
その一画地の中に、住まいの敷地として使われている部分と、
そうでない部分が混ざっていれば、
それぞれの面積を認定します。
一部でも外部に貸したら全部が外れる、という扱いはしません。
課税明細書の摘要欄に「一部住宅用地」と印字されることがありますが、
これが1筆の中に住宅用地と非住宅用地が混在している状態です。
混ざること自体が、制度の中で想定されています。
2.区画で分けるか、台数で按分するか
では、どう切り分けるのか。
京都市の住宅用地認定基準が、二段構えで定めています。
まず、境界を示す工作物などで区分できる場合は、
それによります(第8条)。塀、垣、見切石や植栽です。
そうしたものがなくても、
舗装の有無その他の地表の状況や、
土地の利用の状況から、合理的な範囲で区分するとされています。
区分が困難な場合は、使用割合で按分します
(第9条第1項第1号)。
駐車場については、次の算式です。
S = A × (1 − B/C)
S 住宅敷地となるべき部分の面積
A 駐車場の面積
B 居住者以外が使用する駐車車両の台数
C 駐車可能台数
ご相談の例では、
10区画のうち2区画ですから、
1 − 2/10 = 0.8。駐車場の面積の8割が、住宅用地として残ります。
Cは、駐車区画が明確であれば全区画数、
明確でなければ規模と構造から
合理的に駐車可能と認められる台数を使います。
空き区画は、この算式には出てきません。
Bに入るのは「居住者以外が使用する」台数だからです。
募集中で空いている区画は、
居住者以外が使っているわけではありません。
なお、これは京都市の基準です。
按分の方法は市町村ごとに違いますので、
お住まいの市町村でご確認ください。
3.相続税は、按分しない
相続税のほうは、同じようにはいきません。
アパートの敷地と駐車場をまとめて
貸家建付地として評価できるのは、
駐車場の契約者と利用者のすべてが入居者である場合です。
一部でも外部の人が使っていれば、
入居者専用ではなくなり、駐車場はアパートの敷地とは別に評価されます。
東京地裁 平成25年8月30日判決が、
まさにその事例でした。
アパート4戸と、10台分の駐車場。
駐車場は5台分が貸し付けられており、
利用者5名のうち、アパートの入居者は1名だけでした。
残る4名は近隣の方です。
入居者専用の区画は設けられていませんでした。
判決は、駐車場部分について
貸家建付地の評価を認めませんでした。
注目したいのは、
入居者が使っていた1台分だけを貸家建付地として扱う、
という按分がされていないことです。
入居者が現に使っている区画があっても、
駐車場全体が減額の対象外になってしまうのです。
4.判断の単位が違う
なぜ、片方は按分して、片方は按分しないのか。
判断の単位が違うからです。
固定資産税の住宅用地特例は、
住宅政策の見地から設けられた制度です。
見ているのは、住まいの敷地として使われている土地の面積。
面積に応じて軽くする制度ですから、
面積で割ることができます。
相続税の貸家建付地は、
借家人が建物を使う権利を持つために、
地主が土地を自由に使えない。
その制約の分を差し引く制度です。
駐車場がこの減額に入るのは、
その駐車場がアパートの賃貸借に取り込まれているときに限られます。
そして、取り込まれているかどうかは、
駐車場という一団の土地について判断されます。
区画ごとに数えるのではありません。
だから、按分という発想が出てこないのです。
借地借家法が守っているのは、建物を借りている人の権利です。
その権利がどこまで及んでいるかを、
土地のまとまりで見る。相続税の評価が一貫して持っている考え方です。
5.まとめ
2区画を外部に貸すという判断は、
固定資産税では2割分の話です。
相続税では、駐車場全体の話になりえます。
外部に貸すのであれば、
区画を物理的に分けておくことです。
縁石や白線で区切り、できれば出入口も分ける。
固定資産税では、按分ではなく
境界工作物による区分で処理されることになり、
切り分けの根拠がはっきりします。
相続税でも、外部貸しの部分を別の評価単位として切り出し、
残りを入居者専用として守れる余地が出てきます。
ただしこちらは実態の判断ですから、
分ければ必ず通るというものではありません。
そして、住宅用地の軽減は、
市町村に状況が伝わらなければ受けられません。
地方税法384条を受けて、
多くの市町村が土地の用途を変更したときの
申告を条例で定めており、
期限を翌年1月31日とするところが多いので、
区画の使い方を変えたら確かめてください。
判断が分かれる場面ですので、
駐車場の契約状況と配置を整理したうえで、
専門家にご相談ください。
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