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「株主総会議事録」から読み解くマンションの本当の価値 ~分譲マンション投資の魅力~

「管理組合の運営が丸わかり総会議事録のチェックポイント」
~分譲マンション投資の魅力~

今回は、さらに実践的な観点から、
議事録のどこをどうチェックすれば、
そのマンションの本当の実力が見抜けるのか、
具体的なチェックポイントを解説していきます。

特に「時間」という数字に着目することで、
不動産業者も気づかない管理組合の実態が浮かび上がってきます。

1.なぜ「時間」がそんなに重要なのか
皆さんは会議に参加したことがあるでしょうか。
活発な会議、形だけの会議、紛糾する会議。
それぞれに特徴的な「時間の使い方」があることに気づくはずです。

マンションの総会も同じです。
総会にかかった時間、各議案の審議時間は、
そのマンションの管理状態を如実に物語る「生きた数字」なのです。

まず、総会全体の所要時間から、
管理組合の状態を読み取る方法をお教えしましょう。

(1)「30分未満」の総会が危険な理由
30分で終わる総会と聞くと、
「効率的で良いのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、これは大きな落とし穴です。

いわゆる「シャンシャン総会」です。

議案を読み上げて、異議なしで即決。一見スムーズに見えますが、
これは住民が管理に無関心である証拠かもしれません。
重要な議案も深く検討されずに通過している可能性があります。

年に一度の定期総会では、最低でも前年度の決算報告、
新年度の予算案、理事の選任、
その他の議案があるはずです。
これらを30分で処理するということは、
実質的に議論がされていないということです。

(2)「1時間前後」が示す健全性
逆に、1時間前後で終わる総会は、
理想的な運営がされている可能性が高いです。

それは、各議案について適切な説明がなされ、
住民からの質問に丁寧に答え、納得した上で決議するという
民主的なプロセスを踏むと、自然とこのくらいの時間になるからです。

またこのくらいの時間であれば、
活発な議論が行われている証拠です。

住民が管理に関心を持ち、疑問点を質問し、
納得いくまで議論する。これはマンション自治が
機能している良いサインです。

(3)「3時間超え」が暗示する深刻な問題
一方、3時間を超える総会は、別の意味で危険信号です。

これほど長時間になる理由は主に2つ
一つは、管理組合と住民の間に深い不信感があること。
もう一つは、住民同士が対立していることです。

ある地方都市のマンションでは、
総会が5時間に及びました。
原因は、修繕積立金の値上げ案に対して、
賃貸派と自住派で意見が真っ二つに分かれたからです。
結局、何も決まらずに継続審議。
その後も対立は続き、必要な修繕ができずに雨漏りが発生。
資産価値も下落しました。

2. 1議案あたりの時間に隠された意味
総会全体の時間だけでなく、
個々の議案にかけた時間を分析することで、さらに詳細な実態が見えてきます。

(1)重要議案なのに「10分未満」の不自然さ
例えば、「長期修繕計画の見直し」という重要議案が、
わずか5分で可決されたとします。これは明らかに不自然です。

長期修繕計画は、マンションの将来20~30年を左右する重要な計画です。
本来なら、工事内容の説明、費用の妥当性、積立金の充足性など、
様々な観点から議論されるべきです。
それが5分で終わるということは、
住民が内容を理解していないか、
あるいは理事会が十分な説明をしていないかのどちらかです。

このような「スピード可決」をしているマンションは、
後になって「聞いていなかった」「こんなはずじゃなかった」
というトラブルが発生する確率が非常に高いです。

(2)「15~30分」が示す適切な検討
健全な管理組合では、
重要議案には15分から30分程度の時間をかけています。

この時間配分を見ると、
たいてい次のような構成になっています。
理事会からの説明が10分、質
疑応答が10分、討議が5分、
採決が5分。
これが民主的な意思決定の基本的な流れです。

特に注目すべきは質疑応答の時間です。
10分程度の質疑があるということは、
住民が議案を真剣に検討し、
疑問点を解消しようとしている証拠です。
このような健全な議論があるマンションは、
長期的に見て資産価値を維持しやすい傾向があります。

(3)「45分以上」かかる議案の背景
1つの議案に45分以上かかる場合、
そこには必ず「何か」があります。

最も多いのは、
管理会社の変更や管理委託費の見直しに関する議案です。
現在の管理に不満を持つ住民と、
現状維持派で意見が分かれ、延々と議論が続くパターンです。

3.議事録から読み取る「隠れたサイン」
時間以外にも、議事録には重要なサインが隠されています。

(1)「継続審議」の頻度と内容
継続審議になった議案の数と内容も重要なチェックポイントです。

年に1つか2つの継続審議なら正常範囲です。
しかし、毎回3つも4つも継続審議になるようなら、
それは意思決定能力に問題があるサインです。

特に注意すべきは、同じ議案が何度も継続審議になっているケースです。
「駐輪場の使用規則」が3年連続で継続審議、
というような状態は、
管理組合が機能不全に陥っている可能性が高いです。

(2)「委任状の割合」に表れる関心度
出席者数と委任状の割合も見逃せません。

例えば、出席率80%でも、
実際の出席が5%で委任状が75%という総会は要注意です。
委任状が多いということは、
多くの住民が「誰かに任せればいい」と考えている証拠。
このような消極的な参加では、
重要な問題を見過ごす可能性があります。

4.時系列で見る「改善」か「悪化」か
単年度の議事録だけでなく、
過去3年分の議事録を時系列で見ることで、
管理組合の「方向性」がわかります。

(1)時間が短縮傾向にある場合
3年前は3時間、2年前は2時間、
昨年は1時間半と、総会時間が短縮傾向にある場合、
これは管理組合が成熟してきた良いサインです。
問題が解決され、運営が安定してきた証拠と言えるでしょう。

(2)時間が延長傾向にある場合
逆に、年々総会時間が長くなっている場合は注意が必要です。
新たな問題が発生しているか、
既存の問題が深刻化している可能性があります。
特に、同じ議案の審議時間が年々長くなっている場合は、
問題が解決されずに持ち越されている証拠です。

5.まとめ
総会議事録に記録された「時間」は、
誰も意識していないからこそ、
管理組合の実態を正直に物語ります。

購入を検討しているマンションの議事録を最低3年分は取り寄せ、
時間の推移を含めて分析することです。そうすれば、
不動産業者の営業トークでは決してわからない、
そのマンションの「本当の実力」が見えてくるはずです。

ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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