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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第349回】賃貸経営のプロ廣田 裕司が斬る!④

親の持ち家をどうするか

皆さんこんにちは。大家兼不動産屋の廣田です。

前回の続きです。

6.どのように処分するか

不動産を処分する、つまり手放すと、
固定資産税等の納税義務や管理責任もなくなります。
処分する方法としては、売却する(お金が入ってくる)、
無償で譲渡する(贈与、寄付など)の2通りあります。
令和5年4月27日からスタートする相続土地国庫返納制度を
利用して手放すことも可能になります。

(1)売却
立地の良し悪しが売却価格を左右します。
立地が悪いと売却が困難になる場合があります。
また、建物をそのままにして中古住宅として売り出すか、
建物を解体して更地として売り出すか、
どちらが、高く売れるかを検討する必要があります。
建物が法定耐用年数を超えている場合は、
建物価値の評価が0となり「古屋付き土地」として売りに出されるため、
売却価格が安くなる傾向です。また、法定耐用年数以内の建物でも、
劣化度合いが価格に影響します。

隣接した土地の所有者が、その土地を購入することで、
自分の土地の価値が上がるような場合は、
比較的高い金額で売却できる可能性があります。
このような場合は、隣接地の土地所有者も売却先の候補となります。

・売却した時の税金
不動産を売却した場合、譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得税は、譲渡した年の翌年に確定申告します。
譲渡所得は、売却額から、取得価格(物件を購入したときの価格)、
売却経費などを差し引いて計算します。
売却した物件の取得額が不明の場合は、
売却額の5%を取得額とみなして譲渡所得を計算するので、
税金が高くなります。相続で取得した代々引き継がれた土地は、
このようなケースが多いです。
相続により取得した居住用の不動産を売却する場合、期間は限定されていますが、
一定の要件を満すと、譲渡所得税が優遇される制度があります。
詳細は、税理士さんに相談してください。

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例/国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

(2)無償で譲渡する
・贈与
贈与する場合は、不動産を受け取った人に、
固定資産税などの納税義務や管理責任が移ります。
また、贈与を受けた人に不動産の価格に応じた贈与税を納税する必要があります。

・寄付
自治体など公共性の高い団体に寄付することも考えられます。
しかし、自治体などにとって利用価値が低い不動産は、
寄付を断られる場合があります。

(3)相続土地国庫帰属制度
令和5年4月27日よりスタートした制度です。
相続した土地に関して、一定の要件を満たした場合は、
10年分の管理費を納付すると、国庫帰属となる制度です。
詳細は法務省のHPを参照してください。
この制度の対象は土地であるため、建物は解体して更地にする必要があります。
相続土地国庫帰属制度/法務省
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html

7.まとめ

長寿命化に伴い、相続が発生する年齢が高くなっています。
親の高齢化と同時に財産を受け取る子世代も高齢になります。
高齢になると、認知症を発症しないまでも、体力的に衰えてくるため、
いろいろなことを実行することにも消極的になりがちです。
まして、認知症になり、判断能力を失うと様々な制約を受けます。

親の財産である持ち家の処分に関して、
子世代から話を切り出すのは難しいとは思います。
しかし、重要な問題であることは言うまでもありません。
親の持ち家に関して早めに話をする機会を作り、検討を始めましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ご質問、ご不明点などありましたら、お気軽にお問合せください。

ABOUT ME
廣田裕司
〇空室相談、賃貸経営全般 有限会社丸金商事 取締役 合同会社アップ 代表社員 大学卒業後、メーカーに勤務、主に土木、建築資材営業 生産管理を経験。2001年に妻の実家の賃貸事業をベースに、有限会社丸金商事を設立。同社の取締役に就任し、(当時は兼業)賃貸経営の関わるようになる。2008年に相続により同社代表取締役に就任。翌2009年の会社を退職し専業となる。現在までに3回 新築物件(6棟、27戸)を手がけ、12棟90戸所有。2019年合同会社アップ設立。
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