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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第452回】不動産鑑定士・住宅診断士
皆川 聡が斬る!③

『修繕費高騰と賃貸経営の課題 —
— 鑑定士が読み解く適正賃料と共益費の再構築』

こんにちは、今月担当の不動産鑑定士・住宅診断士の皆川聡です。
前回は、「修繕費の高騰」について、お伝えさせていただきました。
今回は、
『修繕費高騰と賃貸経営の課題 —
— 鑑定士が読み解く適正賃料と共益費の再構築』のポイントを
お伝えさせていただきます。

近年、資材費や人件費の上昇を背景に、建物の修繕費が急激に高騰しています。
外壁改修や防水工事、給排水設備の更新などは、
数年前と比べて2~3割の上昇も珍しくありません。
こうした状況は、賃貸経営におけるオーナーの実質収益を圧迫する要因となっています。
賃貸経営の利回りは、地価や賃料水準だけでなく、
維持管理コストの増減にも大きく左右されます。
そのため、現在のように修繕費が上昇している局面では、
賃料および共益費を経済実態に合わせて適正に見直すことが、
持続的な経営に欠かせません。
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1.経済合理性と法的根拠に基づく賃料改定
借地借家法では、地代や家賃は「経済事情の変動」に応じて
増減請求できると定められています。
修繕費や管理費が継続的に上昇している現状は、
この「経済事情の変化」に該当します。
特に、共用部の電気代・清掃費・管理委託費・保守点検費などは
物価高の影響を強く受けています。
これらを賃料に内包したまま据え置けば、
オーナーの手残りが減少し、結果として建物維持が困難になります。
賃料改定は、オーナー・入居者双方の利益を守るための
健全な経営行為と言えるのです。
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2.共益費見直しのポイントは「透明性」
共益費の見直しでは、まず費用項目の明確化と説明責任が不可欠です。
•共益費に含むべき費用:共用部電気代、清掃費、保守点検、ごみ処理費など
•賃料に内包すべき費用:建物本体の維持管理費や将来の修繕積立金
これらを明確に区分し、入居者へ根拠を示すことで、
納得を得やすくなります。単に一律の値上げを行うのではなく、
上昇分を合理的に算出して提示する姿勢が、
信頼関係の維持に直結します。
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3.市場整合性を重視した賃料見直し
賃料改定に踏み込む際は、地域相場との整合性を確認することが重要です。
近隣の同条件物件を比較(賃貸事例比較法)し、
現行賃料が市場と乖離していないかを把握しましょう。
市場より明らかに低い場合は、修繕費上昇を根拠とした
段階的な改定も検討可能です。
ただし、賃料改定は「信頼関係の維持」と「契約安定性」
とのバランスが鍵です。
対話を重ね、入居者の理解を得ながら実施することで、
長期的な安定経営へとつながります。
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4.価値向上策と修繕投資の「再創造」
賃料改定とあわせて、
エントランス照明の改善や宅配ボックス・防犯カメラの設置など、
小規模でも効果的な改善策 を進めることで、
「値上げ=サービス向上」として受け止められやすくなります。
修繕投資を「価値の再創造」と捉える経営判断が、
結果的に空室リスクの抑制にもつながります。
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5.鑑定士の視点:資産価値を守る適正賃料
不動産鑑定士の立場から見ると、修繕費の上昇を反映しないままでは、
キャッシュフローが減少し、鑑定評価額にも下方圧力が生じます。
したがって、維持管理コストを踏まえた適正賃料の設定こそが、
資産価値の維持につながる と言えます。
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◆ 結びに
修繕費の高騰は一時的な負担であると同時に、
賃料体系を見直し、建物価値を再構築する絶好の機会です。
本質は「値上げ」ではなく、
「実態に即した健全な経営バランスの再構築」にあります。
経済合理性と透明性を両立した賃料・共益費の見直しを通じて、
オーナーとしての安定収益と建物価値の両立を図っていくことが、
これからの時代に求められる不動産経営のあり方と言えるでしょう。

今回はここまでとさせていただきます。
皆様のお持ちの物件の資産形成の一助としてご活用いただきまして、
少しでも皆様のご参考になれば幸いです。
今回も最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。

ABOUT ME
皆川聡
株式会社Aoi不動産鑑定 大手不動産鑑定会社に約8年従事し、メガバンク、政府系金融機関、地銀、信用金庫、信用組合などの金融機関の担保評価をメインに約2500件の案件を携わり、国際線ターミナルの評価の実績もあり。 退職後、平成27年4月に開業。 開業後は、税務対策の鑑定評価や裁判調停等の鑑定評価での多数実績。住宅診断を反映した鑑定評価にて、より清緻な鑑定評価を行っており、鑑定評価額だけではなく、皆様の建物の日ごろのメンテナンスのポイントなどもご提案し、ご好評をいただいております。また2020年10月には、相続税の還付請求にて、他の不動産鑑定士が国税不服審判所にて否認された案件を、その後当職が不動産鑑定を担当。圧倒的な不動産鑑定評価により、東京地裁において、国税庁との裁判で無事完全勝訴しております。
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