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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第453回】不動産鑑定士・住宅診断士
皆川 聡が斬る!④

『金融機関と共に進める「価値を守る経営」
― 不動産鑑定士 × 住宅診断士が語る、
修繕・資金・信頼の連携術 ―』

こんにちは、今月担当の不動産鑑定士・住宅診断士の皆川聡です。
前回は、「修繕費高騰と賃貸経営の課題
—— 鑑定士が読み解く適正賃料と共益費の再構築」について、
お伝えさせていただきました。
今月最後の今回は、
『金融機関と共に進める「価値を守る経営」― 不動産鑑定士 × 住宅診断士が語る、
修繕・資金・信頼の連携術 ―』をお伝えさせていただきます。

修繕費や建築資材の高騰が続く中、
賃貸住宅経営における「建物の維持」と「収益の確保」は、これまで以上に難しいテーマとなっています。
これまでのように「立地が良ければ安心」「満室なら大丈夫」という時代は、
まだしばらくは大丈夫かと思われますが、徐々に終わりつつある地域もあります。
そのような中、いま徐々に求められつつあるのは、
建物の物理的寿命と経済的寿命を両立させる戦略的な経営です。
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1.建物の「劣化速度」を読む力
住宅診断士の視点から見ると、建物の価値は
築年数よりもメンテナンス履歴と劣化速度によって大きく変わります。
外壁クラックや防水層の劣化を放置すれば、
鉄筋腐食や下地損傷へ進行し、修繕費が数倍に膨らむこともあります。
一方で、早期の補修と計画的な更新を行えば、
築30年の建物でも残存耐用年数を10年以上延ばすことが可能です。
金融機関は、こうした物理的リスクの管理状況を重視しています。
定期点検記録やインスペクション報告書を備えておくことは、資産保全だけでなく、
融資審査や借換え交渉の際の「信頼資料」となります。
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2.修繕計画とキャッシュフローの「見える化」
不動産鑑定士の立場から見ると、修繕費上昇を考慮せずにキャッシュフローを
試算することは、将来の収益乖離を招くリスクがあります。
長期修繕計画を作成し、屋上防水・配管・外壁などを10〜15年単位で
整理すれば、金融機関に資金使途と返済計画を一体的に提示できます。
たとえば、
•3年後に外壁改修を予定(概算2,000万円)
•改修後の空室率改善と賃料改定シミュレーション
•改修に伴う資産評価額の上昇見込み
といった具体的な資料を提示できれば、
金融機関はオーナー様を「資産を守る経営者」として高く評価します。
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3.点検データと金融支援をつなぐ
近年では、建物点検データを活用し、
修繕計画と融資支援を連動させるケースも増えています。
住宅診断報告書や劣化診断写真を添付し、
「修繕リスクを定量化」して提示すれば、リフォームローンや
再融資の条件が改善される場合もあります。
また、劣化状態を明確化することで、
費用対効果の高い改修優先順位を設定しやすくなります。
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4.金融機関を「監督者」から「共創パートナー」へ
金融機関との関係を、単なる資金供給者ではなく
資産価値を共に守るパートナーと捉えることが重要です。
早い段階で修繕計画や点検結果を共有し、
支出見通しと収益改善策を明示することで、
信頼関係を深めることができます。
不動産鑑定士・住宅診断士が作成した報告書を活用すれば、説明の裏付けが明確になり、
対話の質が格段に向上します。
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◆ 結びに
修繕費が高騰する今、問われているのは
「融資を受ける力」よりも、建物の状態を説明し、将来を描く力です。
建物の健康状態を可視化し、修繕投資を“価値再生プロジェクト”
として語れるオーナー様は、必ず金融機関からさらなる信頼を
得ることができるはずです。
不動産鑑定士の経済的視点と、住宅診断士の技術的視点。

この二つを融合させることで、オーナー様は
「資産を守る経営者」から「資産を育てる投資家」へと進化できるのです。

今月最後は、ここまでとさせていただきます。
皆様のお持ちの物件の資産形成の一助としてご活用いただきまして、
少しでも皆様のご参考になれば幸いです。
今回も最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。

ABOUT ME
皆川聡
株式会社Aoi不動産鑑定 大手不動産鑑定会社に約8年従事し、メガバンク、政府系金融機関、地銀、信用金庫、信用組合などの金融機関の担保評価をメインに約2500件の案件を携わり、国際線ターミナルの評価の実績もあり。 退職後、平成27年4月に開業。 開業後は、税務対策の鑑定評価や裁判調停等の鑑定評価での多数実績。住宅診断を反映した鑑定評価にて、より清緻な鑑定評価を行っており、鑑定評価額だけではなく、皆様の建物の日ごろのメンテナンスのポイントなどもご提案し、ご好評をいただいております。また2020年10月には、相続税の還付請求にて、他の不動産鑑定士が国税不服審判所にて否認された案件を、その後当職が不動産鑑定を担当。圧倒的な不動産鑑定評価により、東京地裁において、国税庁との裁判で無事完全勝訴しております。
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