その1
~分譲マンション投資の魅力~
今回は資を受ける際に必要となる物件資料の中から
「重要事項調査報告」を取り上げます。
分譲マンション投資ならではの書類で、
ここで開示される情報の良し悪しが、
融資審査の通過率と融資条件を大きく左右します。
まず注意したいのは、名前のよく似た
「重要事項説明書」とは別物だという点です。
重要事項説明書が宅地建物取引士から
買主に対して交付される売買取引そのものに関する法定書類であるのに対し、
重要事項調査報告書はマンションの管理会社が発行する、
マンション全体の管理状況を伝える書類です。
融資担当者は、
この書類で何を読み取っているのか。
順を追って解き明かしていきます。
1.重要事項調査報告書とは何か
重要事項調査報告書は、
分譲マンションの売買にあたって、
対象住戸とマンション全体の管理に関する情報を、
管理会社が一元的に取りまとめて開示する書類です。
発行依頼を受けた管理会社が、
管理組合の財務状況や修繕履歴、
規約上の使用制限などを調査し、
所定のフォーマットにまとめて発行します。
この書類を一言で表現するならば、
マンション全体のカルテです。
総会議事録、長期修繕計画、管理規約といった
個別書類を読み込まなくても、
マンションの健康状態の全体像を把握できるよう、
管理会社の責任において必要情報を要約した書類になっています。
発行費用は管理会社によって異なり、
おおむね一万円から二万円程度。
発行までに数日から一週間ほどかかります。
売主側で取り寄せるのが一般的ですが、
購入を真剣に検討する段階では
必ず買主側でも内容を確認したい書類です。
2.報告書に記載される主な項目
管理会社や書式によって多少の違いはありますが、
業界団体のガイドラインに沿った報告書には、
おおむね次のような項目が記載されています。
まず管理体制関係。管理会社の名称や連絡先、
管理形態が全部委託か一部委託か自主管理か、
管理員の勤務形態などが記されます。
次に共用部分関係。
駐車場・駐輪場の台数や空き状況、
使用料、共用施設の利用ルールが整理されます。
対象住戸の管理費・修繕積立金関係。
当該住戸の月額と、滞納の有無・金額が明示されます。
さらに管理組合全体の収支関係。
管理組合の財務状況、修繕積立金残高、
滞納者数と滞納総額、借入金の有無といった、
マンションの財務面の健全性を示す情報がまとめられます。
専有部分使用規制関係。
ペット飼育、楽器演奏、事務所利用、民泊、
リフォーム時の遵守事項などが整理されます。
大規模修繕計画関係。長期修繕計画の有無、
直近で実施された修繕履歴、
今後予定されている大規模修繕の時期と規模が示されます。
これらに加え、アスベスト使用調査の有無、耐震診断の実施状況、
建物の維持保全に関する書類の保存状況なども記載されます。
投資判断に直結する情報が、ほぼ網羅されている書類だと言えます。
3.融資担当者が最重視する「滞納と財務の健全性」
では、融資担当者はこの書類の
どこを最も注意深く読んでいるのでしょうか。
一番の関心事は、管理組合の財務健全性です。
具体的には、まず対象住戸の滞納の有無を確認します。
区分所有法の規定により、
売主が滞納している管理費や修繕積立金は、
買主が買主自身の意思とは無関係に承継してしまうからです。
買主が滞納を知らなかったとしても、
引渡し後は新オーナーが支払う義務を負います。
融資実行時に滞納額相当を売買代金から精算する
処理がなされるかどうかは、
融資担当者が必ずチェックする点です。
次に注目されるのが、
マンション全体の滞納者数と滞納総額です。
国土交通省の調査では、
管理費等の滞納が発生しているマンションは
全体の約4分の1にのぼります。
築年数が古くなるほど滞納率は高くなる傾向があり、
滞納が放置されていることは管理組合の
機能不全を示すサインとして読み取られます。
滞納が積み上がれば、
当然ながら大規模修繕の原資が不足します。
修繕積立金不足は、
いずれ既存組合員への一時金徴収や値上げに跳ね返り、
賃貸経営の収支を圧迫します。
融資担当者はここまで視野に入れて評価しています。
さらに、管理組合の借入金の有無も重要な確認項目です。
すでに修繕資金を借入で賄っている管理組合は、
自前の積立金で必要な工事を実施できなかったという事実を抱えています。
共用部分に管理組合名義の抵当権が
設定されている可能性もあり、
金融機関から見れば警戒材料となります。
4.まとめ
重要事項調査報告書は、
マンションの管理組合が抱える財務上の状況を、
買主が一目で把握できるよう一冊に集約された書類です。
総会議事録や決算書、
長期修繕計画を個別に読み解かなくても、
滞納状況や借入金の有無といった核心部分が、
ここに凝縮されています。
次回に続きます。



