~分譲マンション投資の魅力~
売買契約書から固都税額の資料まで、
融資審査でほぼ共通して求められる6つの物件資料を、
これまで一つひとつ解説してきました。
今回はその番外編として、
必要書類のリストには必ずしも載らないものの、
物件によっては融資の成否を静かに左右する
一枚を取り上げます。検査済証です。
特に築年数の経った分譲マンションを狙う投資家にとって、
この書類の有無は避けて通れないテーマになります。
1.検査済証とは何か
検査済証とは、建物が完成した後に「完了検査」を受け、
建築基準法の規定に適合していると
認められた場合に交付される書類です。
建築基準法第7条は、
建築主に対して工事完了後の検査申請を義務づけており、
検査の結果が適法であれば、
所管行政庁または指定確認検査機関から
検査済証が交付されます。
ここで混同しやすいのが、
よく似た名前の「確認済証」です。
確認済証は、工事を始める前に、
設計が法令に適合しているかを確認した書類です。
一方の検査済証は、
その設計どおりに適法な建物が完成したことを、
工事完了後に証明する書類です。
図面どおりの完成形が法を満たしていることへの、
公的なお墨付きと言えます。
2.なぜ検査済証がない物件があるのか
新築の分譲マンションであれば、
検査済証はほぼ確実に存在します。
問題となるのは、築年数の経った中古マンションです。
かつて、完了検査は徹底されていませんでした。
国土交通省の資料によれば、
1998年度の完了検査率はおよそ38%にとどまっていました。
つまり当時は、着工前の確認申請こそ受けていても、
完成後の検査を受けていない建物のほうが多数派だったのです。
転機となったのは、
1995年の阪神・淡路大震災でした。
違反建築物の倒壊被害が問題となり、
1998年に建築基準法が大きく改正され、
民間の指定確認検査機関による検査が可能になりました。
その後、完了検査率は2000年に初めて5割を超え、
現在では9割前後で推移しています。
裏を返せば、築25年を超えるような物件では、
検査済証がないことも決して珍しくありません。
規模の小さなマンションや、
古い時期に建てられたマンションでは、十分に起こりうる話です。
なお、マンションの検査済証は、
一棟の建物全体に対して交付されるものです。
区分所有者が購入するのは専有部分ですが、
検査済証は建物全体に関わる書類のため、
管理組合や管理会社が保管しているのが通常です。
3.金融機関が検査済証を見る理由
では、金融機関はなぜこの書類を気にするのでしょうか。
理由は、検査済証が「その建物が適法に建てられた」
ことの公的な証明だからです。
融資は物件を担保に取る以上、
その担保が違法建築でないことは、
金融機関にとって大前提になります。
この流れを決定づけたのが、
2003年に国土交通省が金融機関へ出した要請です。
検査済証のない建物への住宅ローン融資を控えるよう求めたもので、
これ以降、新築物件では検査済証の提出が
事実上の必須条件となりました。
そのため、新築の物件で検査済証が用意できないケースは、
融資が極めて困難になります。
一方、中古物件については、
検査済証がないことが多いという実情を踏まえ、
金融機関も築年数や当時の慣行を考慮し、
後述する代替書類で対応して融資を実行する例があります。
なお、この扱いは住宅ローンでも
投資用ローンでも大きくは変わりません。
いずれも新築では検査済証が重視され、
中古では物件の実情に応じて判断されるのが一般的です。
4.検査済証がない場合の代替手段
検査済証が見当たらない場合でも、
打つ手がないわけではありません。
代表的な対応策を整理します。
第一に、台帳記載事項証明書です。
市区町村は、確認済証や検査済証の
交付年月日・番号などを建築確認台帳に
記録していることがあります。
検査済証そのものは再交付されませんが、
この証明書を取得すれば、
検査済証が確かに交付されていた事実を裏づけることができます。
書類を紛失しているだけのケースでは、
これが有力な代替資料になります。
第二に、そもそも完了検査を受けていない場合です。
このときは、建築士に依頼し、
建築基準法第12条第5項に基づく報告や、
国土交通省のガイドラインに沿った
「適合状況調査」を行う方法があります。
既存の図面や復元図面、現地調査をもとに、
建物が法令に適合しているかを専門家が改めて確認し、
報告書としてまとめる手法です。
この報告書は、
検査済証の代わりとなる合法性の証明資料として、
金融機関や行政に提示できます。
ただし、これらの調査には相応の費用と時間がかかり、
結果として違反箇所が見つかれば、
是正工事が必要になることもあります。
5.投資家が取るべき行動
区分マンション投資の視点で、現実的な対応をまとめます。
まず、築古マンションの購入を検討する際は、
早い段階で検査済証の有無を確認してください。
マンションの場合、
管理組合や管理会社が一棟分の書類を保管していることが多いため、
仲介会社を通じて確認を依頼するのが近道です。
次に、融資を利用するなら、検査済証がない可能性が判明した時点で、
できるだけ早く金融機関に相談することです。
代替書類で対応できるのか、
それとも融資自体が難しいのかを、
契約を進める前に見極める必要があります。
6.まとめ
検査済証は、融資の必要書類リストには必ずしも載りません。
しかし、新築では事実上の必須書類であり、
築古では融資のボトルネックになりうる、影響力の大きな一枚です。
検査済証が見当たらないとき、
台帳記載事項証明書へ、
さらには建築士による適合状況調査へと続いていきます。
一枚の書類の有無だけで判断を止めず、
その先にある証明手段までを見渡せるかどうか。
そこに、築古物件まで含めて
投資の選択肢を広げられるか
どうかの分かれ道があります。



