渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第266回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q
200㎡ほどの土地を、
更地のままコインパーキング業者に一括で貸しています。
舗装も精算機もフェンスも、
すべて業者が自分の費用で設置したもので、
私は毎月決まった賃料を受け取るだけです。
私が設けた構築物が一つもありません。
舗装も精算機も業者の持ち物です。
これでは小規模宅地の減額の特例は使えないのでしょうか?
A
適用可能です。
構築物が誰の持ち物かは、問われません。
相続が起きた時点で、
その土地が建物や構築物の敷地になっていれば、
貸付事業用宅地等として200㎡まで50%の減額を受けられます。
1.条文が求めているのは「土地の状態」
小規模宅地等の特例が対象とする土地は、
「建物又は構築物の敷地の用に供されている宅地等」
とされています(租税特別措置法69条の4第1項)。
この文が言っているのは土地の状態だけです。
「被相続人が所有する構築物の敷地」
とは書かれていません。
誰がその構築物を建てたか、
誰の持ち物かは、
条文の要件に入っていないのです。
同じ考え方は、建物の場合にも表れています。
他人に土地を貸し、
その人が自分の建物を建てている土地(貸宅地)は、
地主にとって建物は他人のものですが、
貸付事業用宅地等として特例の対象になります。
構築物でも理屈は変わりません。
コインパーキング業者が設置した
舗装・精算機・フェンスであっても、
その土地は「構築物の敷地の用に供されている宅地等」に当たります。
2.「駐車場業」でなくてもよい
業者に土地ごと貸している場合、
駐車場を運営しているのは業者であって、
ご自身がしているのは土地を貸すことです。
「自分は駐車場業をしていないから、
駐車場の特例は使えないのでは」と
疑問に思うかもしれません。
しかし、特例がいう貸付事業には、
不動産貸付業、駐車場業、
自転車駐車場業に加えて、
準事業(事業と称するに至らない不動産の貸付けなどで、
相当の対価を得て継続的に行うもの)が含まれます
(租税特別措置法施行令40条の2)。
業者への一括貸付は、このうちの不動産貸付業に当たります。
ご自身が駐車場を運営していなくても、
土地を貸すという貸付事業をしている以上、
対象から外れることはありません。
3.「評価の減額」と「特例の減額」は別物
ここで、多くの方が混同されている点を整理しておきます。
業者に土地を貸している場合、
相続税を計算する過程では、
性質のまったく違う二つの減額が、順番に効いてきます。
一つ目は、土地の評価そのものの減額です。
相続税の土地評価は、その土地に
どれだけ強い権利の重しが乗っているかで決まります。
業者に一括で貸すと土地全体に賃借権が乗るので、
その分を差し引けます(財産評価基本通達86・87)。
二つ目が、小規模宅地等の特例による減額です。
こちらは、土地にどんな権利が乗っているかとは
何の関係もありません。
遺されたご家族の生活や事業の基盤を守る
という政策上の配慮から、
要件を満たす土地について、
課税価格そのものを200㎡まで半分にする仕組みです。
前者は財産評価基本通達という
「土地をいくらと見るか」のルール、
後者は租税特別措置法という
「税負担をどう軽くするか」のルールです。
ですから、評価がほとんど下がらないことと、
特例が使えるかどうかは、まったく連動しません。
「うちの駐車場は評価が
2.5%しか下がらないと言われたから、
相続税の面では期待できない」
――これは、二つを一つに混ぜてしまった誤解です。
順番も決まっています。
まず賃借権を差し引いて評価額を出し、
その評価額に対して特例の50%をかけます。
二段構えです。
土地200㎡、路線価25万円/㎡(
自用地としての評価額5,000万円)、
残存期間2年の一括貸付なら、
5,000万円 ×(1 − 2.5%)= 4,875万円
4,875万円 ×(1 − 50%)= 2,437万5,000円
賃借権によって下がったのは125万円、
特例によって下がったのは2,437万5,000円です。
4.気をつけたいのは、契約が切れたあと
構築物が業者のものでよいですが、
業者の設備は、契約が終われば撤去されます。
舗装をはがして
更地に戻したところで相続が起きれば、
その土地は構築物の敷地ではありません。
特例の要件から外れます。
さらに、貸付事業用宅地等には、
相続税の申告期限まで、
その土地を持ち続け、
貸付事業を続けていることという要件があります。
相続開始の時点では業者に貸していても、
申告期限までのあいだに契約が切れて更地に戻り、
そのまま放置していると、要件を満たせなくなるおそれがあります。
契約の更新時期と相続が重なりそうなときは、
次の借り手を早めに手当てしておくことが、
そのまま相続税の備えになります。
5.まとめ
コインパーキング業者に土地ごと貸している場合、
舗装も精算機も業者の持ち物であって構いません。
相続の時点でその土地が構築物の敷地になっていれば、
貸付事業用宅地等として
200㎡まで50%の減額を受けられます。
むしろ気を配るべきは、
相続の時点と申告期限までのあいだ、
その状態が保たれているかどうかです。
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