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【第121回】弁護士 関 義之が斬る!     「弁護士が語る 民事執行法の改正について」その2

●財産開示手続とは

こんにちは。弁護士の関です。

今回は、財産状況の調査の手続のうち、財産開示手続の改正について解説します。

前回と同じですが、賃借人が数ヶ月賃料を滞納したために、
大家さんが未払賃料を回収したいと考えたとします
(今回は建物の明渡しではなく、未払賃料などの金銭債権の回収のお話です)。

まずは、大家さんから賃借人に未払賃料を払うように要求し、交渉します。

このとき、賃借人が任意に払ってくれればよいですが、
なんだかんだいって支払いをしない賃借人もいます。
この場合には、大家さんとしては、裁判をして回収したいと考えます。
裁判で無事勝訴判決を得たり、裁判手続の中で話し合って和解調書を得ると、
その判決や和解調書を添付して、裁判所に申立てをして
、賃借人の財産(預貯金、給料など)を差し押さえ、賃料を回収することができます。

また、賃借人の中には、
“もう少し待ってください、分割で払いますので”
と分割弁済を求める方もいます。大家さんがこの分割弁済の提案を受け入れる場合、
その内容を公正証書化しておくことができます。
そして、賃借人が約束した支払いをしない場合には、
同じように、公正証書を添付して、裁判所に申立てをして、
賃借人の財産を差し押さえ、賃料を回収することができます。

このように裁判所を利用して債務者の財産を差し押さえて
金銭債権の回収を図る手続を強制執行といいますが、
この強制執行をするために必要となる書類を債務名義といいます。

債務名義には法的手続等の種類により様々なものがあります。
例えば、裁判手続で得られる確定判決、仮執行宣言付判決、和解調書、
支払督促の申立てにより得られる仮執行宣言付支払督促、確定した支払督促、
調停手続で得られる民事調停調書、家事調停調書などがあります。
また、前述した公正証書も執行証書(強制執行認諾文言付公正証書)
という債務名義になります。

つまり、裁判、支払督促、民事調停などの法的手続や公正証書の作成は、
将来債務者の財産を強制執行するために必要となる債務名義を
取得するために行うものといえます。

しかし、一生懸命、裁判でがんばって勝訴判決を得ても、
債務者に財産がなければ、強制執行をすることができず、
その判決は単なる紙切れ同然となり、
何のために裁判をしたのかということになってしまいます。

また、強制執行ができない場合というのは、
このように本当に債務者に財産がなく、
悔しいけれどある意味仕方がないというケースもありますが、
財産はあるのに債務者が債権者に開示しないために
強制執行ができないという不合理なケースもあります。
このような不合理なケースを減らすために、
平成15年の民事執行法の改正で、強制執行の対象財産を調査するために、
財産開示手続の制度が創設されました。

この財産開示手続は、債権者が裁判所に申立てをして、
債務者に財産開示期日に裁判所に出頭させ、
債務者の財産状況を陳述させるという手続です。

東京地方裁判所における申立手続については、
「民事第21部(民事執行センター・インフォメーション21)」の
「財産開示手続を利用する方へ」というページに詳しく記載されていますので、
ご興味ある方はご参照ください。

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/zaisankaizi/index.html

●財産開示手続の強化

平成15年に創設されたこの財産開示手続はこれまで十分に活用されて
いませんでした。

平成29年の申立件数は686件程度に止まっています。
その理由としては、債務者が裁判所に出頭しなかったり、
出頭しても財産情報について陳述しない場合の罰則が「30万円以下の過料」
と軽く、実効性が不十分なのではないかと考えられました。
実際、平成29年に終わった財産開示手続申立事件681件のうち
財産情報が開示された件数は253件(約37%)にすぎなかったようです。
そこで、今回の改正により、この手続の実効性を上げるために、
不出頭、宣誓拒絶、不陳述、虚偽陳述という手続違反についての罰則を、
「6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金」と強化しました。

また、これまでの財産開示手続では、
申立てが可能となる債務名義が制限されていて、仮執行宣言付判決、
仮執行宣言付支払督促、確定判決と同一の効力を有する支払督促、執行証書
(強制執行認諾文言付公正証書)などでは財産開示手続を申し立てることが
できませんでした。
例えば、前述の公正証書の場合には、財産があれば強制執行はできるのですが、
その前提となる財産開示手続は利用することができなかったのです。
今回の改正では、この債務名義の制限がなくなり、
金銭債権の債権者であれば、どの債務名義であっても財産開示手続の
申立てができるようになりました。

 

 

ABOUT ME
関 義之
関 義之
関&パートナーズ法律事務所 代表弁護士・中小企業診断士 平成10年3月に早稲田大学を卒業し、その年の10月に司法試験に合格。平成12年10月から弁護士登録。中小企業の総合支援を目標に掲げ、平成23年10月から中小企業診断士にも登録。法人・個人を問わず幅広く紛争に関する相談を受け、代理人として示談交渉や訴訟等に対応するほか、契約書の作成・チェック等、紛争が生じる前の予防法務にも力をいれている。
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