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【第305回】弁護士 関 義之が斬る!     「株式の承継について」 その3

●株式の承継について

こんにちは。弁護士の関です。

今月は「株式の承継について」を書いていきます。

●確保すべき株式(議決権)の割合

前回は、株式に関する現状分析、課題の洗い出しについてお話ししました。
今回は、その前提となる目指すべき方向性についてお話しします。

株式会社の事業承継においては、
後継者(例えば、長男)に、株式を集中的に承継させることを目指します。
これは、安定した経営を行うために、後継者に会社支配権を確保させるためです。

そのためには、具体的に、どの程度の株式を承継させればよいのかですが、
最低でも議決権の過半数、できれば3分の2以上、
可能であれば、100%を目指します。

議決権の過半数というのは、株主総会の普通決議の可決要件です。
普通決議では、原則として、役員の選任、解任ができますので、
後継者が自分を補佐してくれる役員を選ぶのに、
また、自分が解任されないようにするために、過半数が必要になるのです。

議決権の3分の2以上というのは、株主総会の特別決議の可決要件です。
特別決議は、定款変更、事業譲渡、
解散などの重要な事項を決めるときの決議となります。

そのため、事業承継においては、
この議決権の過半数や3分の2以上などの目標を定め、
その目標を達するためにはどのような支障があるかという観点で、
株式に関する現状分析、課題の洗い出しを行うことになります。

●株式の分散と集約

もともと経営者(例えば、父親)が100%の株式を保有していれば、
その株式を後継者にどうやって承継すればよいかだけを考えればよいですが
(これは次回にお話しします)、実際には、他にも複数の株主がいて、
株式が分散しているケースがよくあります。
そうすると、父親の株式を後継者に承継するだけでは議決権の
過半数に達することができないケースもあり、このような場合には、
他の株主からも後継者が株式を取得する必要がでてきます。
これを、株式の集約などと呼んでいます。

株式を集約するためには、原則として、その株主から贈与を受けたり、
買い取ることが必要になります。
買い取る場合には、株価が高いとその買取資金の調達方法が課題となります。
また、株主の中には、そもそも株式を手放すことに拒否反応を示す方もいて、
粘り強く交渉することが必要になります。

ABOUT ME
関 義之
「関&パートナーズ法律事務所 代表弁護士」 平成10年 3月に早稲田大学法学部を卒業し、 その年の10月に司法試験に合格。 1年半の司法修習を経て、平成12年10月から弁護士登録。 平成23年10月から中小企業診断士にも登録。 法人・個人を問わず幅広く紛争に関する相談を受け、 代理人として示談交渉や訴訟等に対応するほか、 契約書の作成・チェック等、 紛争が生じる前の予防法務にも力をいれている。 不動産の賃貸・売買や、 遺言・遺産分割・遺留分など相続に関する相談を、 幅広く受けている。 特に力を入れている分野は、中小企業の事業承継支援。 セミナー経験多数。 詳しくはWebサイト参照  https://seki-partners.com/
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