ブログ

貸駐車場に小規模宅地等の特例。アスファルトの有無で変わる?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第265回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。


Q
自宅の近くに200㎡ほどの土地を持っており、
月極駐車場として近隣の方に1台ずつ貸しています。
区画はロープと車止めの石で仕切っただけの、簡素なつくりです。
小規模宅地等の特例の減額は適用できますか?

A
ロープと石で区切っただけの、
いわゆる青空駐車場のままでは、
小規模宅地等の特例は使えません。

土地の上にアスファルト舗装や砂利敷きなどの
「構築物」があれば、貸付事業用宅地等として、
200㎡まで評価額を50%下げられます。
分かれ目は「貸しているかどうか」ではなく、
「構築物の敷地になっているかどうか」です。

1.小規模宅地等の特例と「貸付事業用宅地等」
小規模宅地等の特例は、
相続した土地のうち一定のものについて、
相続税の評価額を大きく引き下げる制度です
(租税特別措置法69条の4)。

亡くなった方の生活や事業の基盤だった土地に、
そのまま高い相続税をかけると
住まいや商売を手放さざるを得なくなる
――それを防ぐための特例です。

この特例には、居住用・事業用・
貸付用などの区分があります。
駐車場が当てはまるのは
「貸付事業用宅地等」で、
亡くなった方が不動産の貸付け
(駐車場業を含みます)に
使っていた土地について、
200㎡までの部分の評価額を50%減額できます。

注意したいのは、
対象になる土地が条文で
「建物又は構築物の敷地の用に供されている宅地等」
に限られていることです。

2.「貸していれば使える」ではない――構築物が要る理由
「第三者に貸して駐車料金をもらっているのだから、
立派な貸付事業のはず」と思われるかもしれません。

ですが、特例が守ろうとしているのは、
土地の上に建物や構築物という形で
事業の基盤が築かれている状態です。

更地にロープを張って車を停めさせているだけでは、
土地そのものを素のまま貸しているのに近く、
特例が想定する
「構築物の敷地」とはいえない、
と整理されます。

具体的には、次のような分かれ方になります。
・特例が使えない(構築物なし)
……ロープ、車止めの石、看板だけの青空駐車場
・特例が使える(構築物あり)
……アスファルト・コンクリート舗装、
砂利敷き、フェンス、精算機などを設けた駐車場

実務では、何が「構築物」に当たるかを、
減価償却資産の耐用年数等に関する
令の別表に照らして判断するのが一般的です。
アスファルト舗装は、
この別表で構築物に位置づけられています。

3.評価による減額と、特例による減額は別の話
ご自身で運営する月極駐車場は、たとえ第三者に貸していても、
相続税の土地評価そのものは下がりません(自用地評価)。
借地借家法に守られた強い借り手がいない土地だからです。

ところが、評価が下がらないことと、
小規模宅地等の特例が使えることは、別の話です。
評価は自用地のまま(=賃借権による減額はゼロ)でも、
アスファルト舗装さえしてあれば、その評価額に対して200㎡まで50%の減額を受けられます。

「評価の減額」と「特例の減額」は、
別々の入口を持つ、二段階の仕組みだと考えてください。
青空駐車場は、どちらの入口も閉じている状態なのです。

4.具体的な計算と、砂利敷きの落とし穴
数字で見てみましょう。
・駐車場200㎡、路線価25万円/㎡
・自用地としての評価額 25万円 × 200㎡ = 5,000万円

青空駐車場のままなら、
評価額5,000万円に特例は使えず、そのまま課税対象です。

一方、アスファルト舗装をしてあれば、貸付事業用宅地等として200㎡まで50%減額でき、
 5,000万円 ×(1 − 50%)= 2,500万円

評価額を2,500万円も下げられる計算です。
舗装工事の費用(規模にもよりますが数十万円から百数十万円程度)と比べても、
効果の大きさが分かります。
ただし、「一度なにか敷けば安心」ではありません。

過去には、砂利敷きの月極駐車場について、
敷いてから年月が経ち、砂利が地中に埋もれて土地の一部のような状態になっていたことから、
相続開始時点では「構築物」とはいえないとして、
特例の適用が認められなかった裁決があります
(国税不服審判所 平成7年1月25日裁決)。

構築物といえる状態が、
相続開始の時点で保たれているか――そこまで問われるということです。
舗装のひび割れや砂利の沈み込みには、
日頃から気を配っておく必要があります。

5.まとめ
貸駐車場に小規模宅地等の特例が使えるかどうかは、
「貸しているか」ではなく「構築物の敷地になっているか」で決まります。
構築物といえるかどうかは、
舗装や砂利の状態しだいで判断が分かれる場面も多いので、
迷ったら、現地の状況を整理したうえで専門家にご相談ください。

ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
さらに詳しく知りたい方へ