相続があった場合は、相続の承認・放棄の期限、被相続人の準確定申告の期限など様々な期限に追われますが、相続税の申告期限はいつまでなのでしょうか。また、遺産分割がまとまらない場合などに期限の延長はされるのでしょうか。
本稿では、相続税の申告期限についてまとめていきます。
1. 相続税の申告期限
相続税の申告期限は、相続又は遺贈により取得した財産(相続開始前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産を含みます。)及び相続時精算課税の適用を受けて贈与により取得した財産の額の合計額が遺産に係る基礎控除額(「第四回養子縁組による節税メリットとその留意点」をご参照ください。)を超える場合には、その相続開始があったことを知った日の翌日から10月以内とされています。
よって、基礎控除額の範囲内であれば申告も納税も必要ありません。
なお、相続税の申告期限は相続税の納税期限でもあるので、当該期限までに申告がされていても相続税が納税されていない場合は、延滞税がかかることもあります。
2. 相続又は遺贈による財産の取得がない場合でも相続税の申告は必要か
相続又は遺贈による財産の取得がない場合でも相続時精算課税の適用を受けて被相続人から贈与により財産を取得した「相続時精算課税適用者」についても上記⑴に該当するときは、相続税の申告が必要となります(「第七回いますぐ分かる!相続時精算課税制度の基礎」をご参照ください。)。
なお、その相続時精算課税適用者が納税となるか還付となるかは財産の取得状況などによります。
3. 特例の適用により相続税額が生じない場合は申告は必要ないのか
配偶者の税額軽減(「第十八回配偶者がいれば一安心!?(配偶者の税額軽減①)」をご参照ください。)や小規模宅地等の特例等の適用を受けたことにより相続税額が生じない場合であっても申告書の提出は必要となります。
4. 申告期限までに遺産分割がまとまらない場合には申告は必要ないのか
遺産分割協議がまとまらない(「第五回遺産分割がまとまらない!!」をご参照ください。)ことと相続税の申告期限は別となります。よって、期限が延長されることはありません。
また、これを理由に申告をしない場合は、追徴課税などによるペナルティが生じる恐れがあるとともに、期限内申告を要件とする特例の適用を受けられないことになります。
5. 相続開始があったことを知った日の翌日から10月以内
具体的な期限は、例えば1月10日に被相続人が死亡した場合にはその年の11月10日が申告期限になります。
また、この期限が税務署が提出を受け付けていない土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、これらの日の翌日が期限となります。
よって、今年の10連休期間内に申告期限があるような場合は、連休明けの5月7日が申告期限となります。
なお、相続開始があったことを知った日は原則として被相続人が死亡した日をいいます。
まとめ
相続税の申告期限は非常に特殊な事例でなければ延長は認められることはありません。
また、相続税の申告期限は納税期限でもあります。特に相続税は多額の税負担が生じることが多いので、納税資金の事前準備、ときに納税方法の検討も必要と考えています。